家族や一部の親族だけでこぢんまりと済ませる葬儀「家族葬」や、通夜や告別式を行わない「直葬」が増えている。しかし時間がたって気持ちが落ち着いてくると、「やっぱりきちんと送れば良かった」と後悔する遺族も多い。こうした弔意を拾う新たなサービスとして、葬儀後に改めてお別れ会を開くケースが増えているという。変わり行く「葬式」のかたちについて考える。

変わりゆく「葬式」のかたち

今、「お葬式」と聞いて、どんなものをイメージするだろうか。黒白のしま模様の鯨幕が張られた葬儀社のホール入り口に、喪服に身を包んだ大勢の参列者が受付に並ぶような光景が思い浮かぶだろうか。もしくは、たくさんのパイプ椅子が並ぶホールに僧侶の読経が流れる中、焼香の順番を待つ間の焦燥感や作法に対する不安感などといった、気もそぞろな感覚を思い出すだろうか。

ところが近年、こうした光景は姿を消し、焦燥感や不安を感じる場面は少なくなっている。なぜなら、葬儀の縮小化・簡素化が急激に進んでいるからだ。

例えば家族葬と呼ばれる葬儀形式は、多くの場合、家族や一部の親族だけで行われる。以前は密葬と呼ばれていた葬儀の名称が変化したものだ。

また、通夜や告別式を行わず火葬だけで済ませる、「直葬(火葬式)」と呼ばれる葬儀形式も増えている。直葬の平均参列者数は6~7人で、火葬料金や遺体を運ぶ搬送費、ひつぎや骨壷、位牌など、必要最低限の物品やサービスしか必要としないため、一般的な葬儀よりも費用を抑えられるほか、故人とのお別れは火葬炉の前や火葬場の別室などで簡潔に行われるため、時間も短縮される。

2000年頃から全国的に家族葬・直葬が増え、葬式の小型化が進んだ。これにより、かつての親族をはじめ故人に生前関係のあった方たちが参列し、宗教儀礼を中心に儀式を行うスタイルの葬儀を、「一般葬」と呼び分けるようになった。

関東では直葬が2割以上を占めている

月刊『仏事』を出版する鎌倉新書が、全国のおよそ200の葬儀業者を対象に2013年の1年間で直葬がどのくらい行われたのかを調べた結果、関東地方が最も多く、ほぼ5件に1件、葬儀全体の22%を占めていることが分かった。関東の次には近畿地方の11%が続き、東京や大阪などの大都市圏で直葬の割合が高くなった(月刊『仏事』2015年2月号)。

また、同じく鎌倉新書が2013年に第1回、2015年に第2回を実施した「お葬式に関する全国調査」の都道府県別平均会葬者数を見ると、東京都は第1回66人、第2回45人で、増減率は-31.8%。愛知県は第1回84人、第2回58人で、増減率は-31.0%。大阪府は第1回58人、第2回44人で、増減率は-24.1%。全国平均は、第1回78人、第2回60人、増減率は-23%だった。わずか2年の間に20~30%も会葬者数が減少している都道府県が少なくない。

さらに、2015年の時点での葬儀の形態としては、東京都で一般葬33.9%、家族葬44.6%。愛知県で一般葬・家族葬ともに46.9%、大阪府で一般葬40.9%、家族葬43.2%と、特に三大都市圏で、一般葬よりも家族葬の割合が増えていることが分かった。

ここ数年の間に、直葬や家族葬など、参列者が少人数の葬儀が増えている状況がわかる。社会構造の変化や少子高齢化による人の流動化、地縁の希薄化や葬儀に対する知識・宗教観の低下、価値観の変化や経済的な事情などが主な理由だ。

「小さなお葬式」など、社会状況に合ったネーミングの巧みさも相まって、「家族葬」は瞬く間に認知され、縮小化の波に乗り、さらに安価で手軽な葬儀として、通夜や告別式を行わず火葬のみの「直葬」もじわじわと増えていった。