安倍晋三首相の内閣改造に対し、新聞各紙は8月4日付けの朝刊社説で一斉に論評した。そのなかで朝日新聞だけが、他紙の半分、いわゆる“半本社説”と短かった。“安倍嫌い”な朝日ゆえの嫌味なのだろうか。一方、他紙の社説は物足りない。もっと安倍政権に注文を付けてもいいのではないか。ジャーナリストの沙鴎一歩氏が問う――。
朝日新聞の社説(8月4日付)。見出しは「内閣改造 強権と隠蔽の体質正せ」。

政権失速の最大の原因は「首相」

朝日社説は「安倍首相が内閣改造と自民党役員人事を行った」と書き出し、「麻生副総理・財務相、菅官房長官、二階幹事長を留任させる一方、政権に距離を置く野田聖子氏を総務相にあてるなど、『お友だち』に甘いという批判を意識し、刷新イメージを打ち出す狙いがあるようだ」と推測する。

確かに今回の内閣改造は「お友達内閣」という批判をかわすのが大きな目的だろう。

続けて朝日社説は「とはいえ、忘れてならないのは、政権失速の最大の原因がほかならぬ首相にあるということだ」と言い切る。

そのうえで「朝日新聞の7月の世論調査では、首相の最近の発言や振るまいについて61%が『信用できない』と答えた」と書く。

自社の世論調査を持ち出すところは、少々手前味噌かもしれないが、そこは天下の朝日新聞である。具体例を挙げてこう批判する。

「辞任した稲田元防衛相を国会の閉会中審査に出席させようとしない姿勢は、身内に甘く、都合の悪い情報を隠そうとする政権の体質がまったく変わっていない現実を露呈している」

そして「政権の強権姿勢と隠蔽体質を正せるかどうか。改造内閣が問われるのはそこである」と問題点を突くのである。沙鴎一歩はどの新聞にもくみしないが、朝日ファンならここで拍手喝采だろう。

具体例を挙げた批判はさらに続く。

「身内への甘さの裏側にあるのが、自らに批判的な人々を敵視する姿勢だ。東京都議選の最終日、『辞めろ』コールをする聴衆に向かい、首相が『こんな人たちに負けるわけにはいかない』と声を張り上げたのはその典型である」

発言を蒸し返されて、安倍首相は耳が痛いに違いない。

内閣改造を他紙の半分にする「嫌味」

内閣改造にともなう人事にはこう言及している。

「だが、その(「共謀罪」法の)指揮をとった松山政司・参院国対委員長を1億総活躍相に、稲田氏の国会招致を拒んだ竹下亘・衆院国対委員長を総務会長に就けた。首相は記者会見で反省を口にし、頭を下げたが、真意を疑わせる人事だ」

次に朝日社説は「憲法に基づく要求」として臨時国会の開催を強く求める。

「臨時国会では一連の問題について関連文書の調査を尽くし、すべて公開するとともに、関係者に出席を求め、事実を包み隠さず明らかにする必要がある」

そして「このまま説明責任を果たさないなら『疑惑隠し』の改造と言うしかない」という強い調子で批判を重ね、駄目押しで「自らが深く傷つけた政治全体への信頼を取り戻す一歩を踏み出すことができるか。問われているのは首相自身である」と締め括っている。