長期政権の道を着々と歩んできた安倍晋三首相が窮地に立たされている。首相の親友が理事長を務める学校法人「加計学園」の獣医学部新設をめぐる問題は、首相サイドの明確な説明が果たされないことで国民の「安倍離れ」が加速。内閣支持率は「危険水域」とされる2割台まで急落した。7月2日の東京都議選で歴史的大惨敗を喫した自民党は「総括」もできないままで、政党支持率も下落傾向にある。政府・自民党は8月3日にも断行する内閣改造を反転攻勢のきっかけにしたい考えだが、その先行きは決して明るくない。「国民の信頼回復に向けて努力を積み重ねていきたい」。安倍首相は7月18日の党役員連絡会で、自ら国会で説明する意向を示したが、自民党幹部の表情は硬い。その理由は、加計問題で政府の説明に納得しないとの世論が大半を占めている点にある。内閣支持率は時事通信で29.9%(15.2ポイント減)、テレビ朝日で29.2%(8.7ポイント減)と2割台に突入し、2012年末の第2次安倍政権発足以降で最低を記録。不支持率は一気に5割程度になっている。
自民党幹部の一人は「加計問題が国会で追及され始めたとき、首相官邸サイドはすぐに批判はおさまるだろうと見た。だが、それがそもそも甘かった。タイミングも最悪だった」と語る。加計問題で追及する野党は憲法に基づく臨時国会の開催を要求しているが、政府・自民党は拒否。菅義偉官房長官や竹下亘国対委員長が記者団の問いかけに「強面、ぶっきらぼうで応じた」(自民党中堅議員)ことも世論の反発を浴びた。その最中に投開票を迎えた東京都議選では、小池百合子都知事が率いた地域政党「都民ファーストの会」の圧勝を許し、自民党は史上最低の23議席。閣僚や党幹部が連日応援に入る総力戦で臨んだ結果だったが、いまだに「総括」らしいものは聞こえないままだ。