残業はしたくないが、高給与なら話は別

就職先選びで、長時間労働かどうかなど労働時間や休日を指標にする学生は最近増えている。

日本生産性本部は、今年春に入社した新入社員に「残業は多いが、仕事を通じて自分のキャリア、専門能力が高められる職場」と「残業が少なく、平日でも自分の時間が持て、趣味などに使える職場」のどちらがよいか、アンケート調査を行っている。この結果、74.0%が後者の「残業が少なく――」という後者を選んだという。

にもかかわらず、給与は高いが労働時間も長い企業の評価が高くなったのはなぜなのか。「それは年収の高さにある」と指摘するのは電通と同業他社の人事課長だ。

「給与が低くて長時間労働だと不満も出るが、30代で年収1000万円をもらえるとタワーマンションにも住める。どんなに忙しくても仕事が面白ければみな納得するし、長時間労働でも不満を口にする人は少ない」

▼破格の給与で、目をつぶる社員つぶらない社員

記事では、クチコミ評価がいい企業だけでなく、クチコミ評価が悪い(5点中2.7点以下)の企業の40歳推定年収ランキングも掲載している。これをみると1000万円を超えているのは1位のファナック(1537万円)だけで、2位以下は1000万円に届いていない。やはり、クチコミ評価の良し悪しは、給与の多さ次第ということだろうか。

労働の究極の目的がお金である以上、破格の給与をもらうと、それ以外の要件には目をつぶるのもわかるような気がする。

しかし、それでも最近は常軌を逸した長時間労働に我慢できない若い人たちが出てきているようだ。

「いくら高い給与を払っても、仕事のストレスを感じている若い世代の中には違法労働はよくないと考え、労働基準監督署に告発する人がいる。昔は高給をもらっている人が告発するということは考えられなかったが、最近は仕事に対する価値観も変わっている。電通もそうした企業の典型だろう」(前出の人事課長)