【青野】自信を持ってほしいと思います。ずっと会社にいる男性たちには決して得られない、生活者視点という強みを備えているんですから。

【田中】育児や地域活動を通じて磨かれた「大人力」も強みになりますよね。

【青野】ああ、なるほど。わかります。

青野慶久●サイボウズ 代表取締役社長。1971年生まれ。大阪大学工学部卒業後、松下電工(現パナソニック)に入社。97年、サイボウズを設立し、05年より現職。3度の育児休業と短時間勤務を経験。著書に『チームのことだけ、考えた。』など。

【田中】今はどの企業でも、決まりきった正解の型があるわけではなく、混沌(こんとん)とした中からイノベーティブなものを生み出す力が問われる時代ですよね。その過程では、臨機応変に問題発見・解決ができる柔軟な対応力というのが求められる。仕事仲間も顧客も、多様なバックグラウンドを持つダイバーシティの時代でもあります。そこで発揮されるのが、育児や地域活動で得た柔軟な対応力だと思うんです。本当に複雑で混沌とした世界での問題解決能力を培ってきたのだと、見方を変えていただきたいです。

【青野】深くうなずけます。子どもなんて、言うこと聞かない相手の代表ですからね。毎朝大変です(笑)。

【田中】かわいいですね(笑)。

【青野】かわいいんですけど、一分一秒を争っているときに限って……(笑)。こういう日常を繰り返していると、完全に腹が据わりますよね。想定外のことに対して耐性がつく。どんなに理不尽なことが起きても落ち着いて対処できる。これ、変化の激しい今の時代にはすごく大事なビジネススキルですよ。また、ブランク女性に限らず時間制約がある社員に言えることですが、時間管理能力はバツグンですね。徹底的に優先順位を見極めて重要なタスクから着実に取り組んでいく。

【田中】複数の仕事の優先順位を瞬時に判断して処理していくマルチタスク能力は、まさに育児や地域活動の経験から鍛えられるのでしょうね。

【青野】総理が「脱・長時間労働社会」を掲げましたが、今まで長時間労働に頼ってきた人は本当にまずいですよ。生産性の差があからさまに見えてしまいますから。時間制約のある中で必死に結果を出してきた人との差が。

【田中】育児経験のある女性たちにヒアリングを重ねていると、会社から帰宅した後の育児タスクがいかにハードであるか、伝わってきます。こういった日常をイメージできるかどうかは、これからの組織のマネジメントで欠かせない視点になってくると思いますし、その発信源としてもブランク女性は貢献できると思います。