【田中】「ブランクは決してマイナスではない」というメッセージは、アメリカで人材インターン事業を行うキャロル・コーエンさんも強く発信されていますね(参考:アメリカで進む「40代からのインターン」 http://president.jp/articles/-/22142)。いわく、「キャリアブランク」ではなく「キャリアブレイク」だと。より多様なものの見方や思考を吸収するためのブレイクとして、離職期間をとらえるべきだとおっしゃっています。

田中美和●Waris 代表取締役。1978年生まれ。慶應義塾大学卒業後、日経ホーム出版社入社(現日経BP社)。雑誌編集に携わった後、フリーランス記者を経てWaris(ワリス)設立。著書に『普通の会社員がフリーランスで稼ぐ』。

【青野】興味深いですね。そもそも世間でとらえられている「働く」の定義の範囲が狭いのではないでしょうか。会社に行って給料をもらうことが「働く」で、家事や育児は「働く」ではないのはおかしい。家事や育児をアウトソースしたら安くない料金が発生しますよね? れっきとした仕事ですよ。だから、会社に所属して給料をもらう期間だけを「働く」と考えることには相当違和感があります。

【田中】ビジネスの実務特有のスキルやコミュニケーションの面で勘を取り戻す時間は少し必要かもしれませんが、論理的思考やチームワークといった人材の基礎スキルはブランクによって劣化しないはずです。日ごろ女性たちにヒアリングをしながら、優秀な方はやはり優秀だと感じています。

【青野】日本の大企業でのモデルは、一律に新卒で一括採用して、1年、3年、5年、10年……と連続した時間の積算に比例する形で人は成長していく、という前提の考え方がありますね。でも、実際には仕事ができない課長や部長はざらにいて、優秀か否かは勤続年数で測れないんですよね。一度、会社生活を離れたほうが、ひらめきの感度がより磨かれる人だっている。「アイデアで新たな価値を創造する」をミッションとする仕事であれば特に、ブランクは強みになると僕は思います。

――サイボウズのようなIT企業では、常に時代に取り残されないようにスキルのバージョンアップをしなければならないというイメージがあります。それでもブランクは強みになると言えるのでしょうか?

【青野】確かにIT企業を取り巻く環境の流れは日進月歩ですが、それについていくための努力は誰もがしなければいけないことですし、本気で勉強すればすぐに習得できます。むしろ、「実際にママ友コミュニティーでSNSがどう使われているか?」といった消費者目線では、離職期間のある方のほうがたけている可能性だってあるんじゃないかと思いますけどね。

【田中】青野社長のように言っていただけると心強いのですが、実際には自信を失っている女性がとても多いのも事実です。難関資格を持ち、非常に高いスキルを備えている女性でも、「私はもう通用しない」と一歩を踏み出せないんです。だから、背中を押してあげる仕掛けづくりは必須だと感じます。