非スーツビジネスは収益事業に育つか

青山商事を追う業界第2位のAOKIホールディングスは、「多角化」については青山商事の先を行っている。14年にはブライダル事業「アニヴェルセル」を子会社化。同年2月、横浜市のみなとみらい地区に国内最大級の結婚式場を開業するなど、全国で展開を加速している。さらに子会社の「ヴァリック」ではカラオケや複合カフェも展開する。非スーツ事業は総売上高の約4割を占め、青木彰宏社長は「将来は非スーツの割合を5割に」と意気込む。

業界3位のコナカは、「学童保育」のニーズに対応する英会話教室「Kids Duo(キッズデュオ)」、バイリンガル幼稚園「Kids Duo International(キッズデュオインターナショナル)」を展開している。共働きを選ぶ子育て世代の増加を見越した事業だ。13年にはとんかつ店「かつや」に加えて、16年夏からはから揚げ専門店「からやま」を出店するなど外食事業にも積極的だ。また、4位のはるやま商事は今年1月、純粋持ち株会社に移行した。スーツやカジュアル衣料の子会社をぶら下げる経営形態とすることで、今後は非スーツ事業としてメガネや靴など服飾雑貨の本格展開も視野に入れる戦略だ。

紳士服大手各社が先を争うように取り組む事業多角化は、スーツビジネスが限界を迎えつつあることを示している。なかにはアパレル会社が外食事業に参入することに突飛な印象をもつ読者がいるかもしれないが、郊外型店舗と併設することで相乗効果を引き出す狙いがある。各社とも体力がある間に新たな成長分野を確立したいという思惑があるのだ。

しかし、各社の多角化が必ずしも祖業を補うまでの収益事業に育つとは限らない。たとえばAOKIの場合、非スーツの牽引役だったブライダル事業には婚姻件数の減少という逆風が吹き込んでいる。また大型の式場開設には多額の投資がかかるため、市場環境の悪化には大きなリスクがある。人口減少時代に入り、デフレ脱却もままならないなか、人手不足や人件費の高騰という圧力も加わる。個人消費をうまく捉えることができるか。「スーツ屋の商法」には多難が予想される。

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