お酒は好きだけれど、ビール1杯で酔っ払ってしまう。でも、大切な接待で、早々にウーロン茶を頼むのは気が引ける……。そんなあなたに、お酒に弱い営業部長のマル秘宴会術をご紹介しよう。

ノンアルコールビールの頼み方

ここは、尼崎市の繁盛店「赤べこ塚口中央店」。キリンビールマーケティングの江森晋さんは、人差し指を立てて、2杯目を注文した。それまで飲んでいたのは、もちろん「一番搾り」。「赤べこ」のスタッフは、心得たようにうなずくと、すぐに中ジョッキを運んできた。ところが、今度の中身はビールではなく、ノンアルコールの「キリンフリー」である。

「これなら一緒に飲んでいる得意先の方にも気を遣わせません。いくらお酒が強くないといっても、気まずい雰囲気になっては困りますから、とりあえず乾杯はビールです。しかし、ずっと飲み続けるとダウンしてしまいますので、店の人と事前に打ち合わせをしてノンアルコールに切り替えるサインを決めたのです(笑)」

大切な得意先との宴席では、相手に気を遣わせるわけにはいかない。まして、江森さんはビール会社の営業マン。誰しも「飲めないはずがない」と思う。その意味では、座は盛り上がって当然なのだから、このような工夫が必要なのだ。

江森さんは、1991年に新卒でキリンビールに入社。横浜支社営業課を皮切りに、福島、青森、仙台と東北3県を回り、2006年に東京に戻り、6年余り勤務。営業新会社・キリンビールマーケティングの山梨支社を経て、15年4月から神戸支店に担当部長として赴任した。

新天地では、兵庫県内最大手の酒類卸である越山酒販を受け持つことになった。同社との商談でまとまる売上高が、江森さんの目標全体の8、9割を占める。それだけに、日頃からの関係強化は欠かせない。会食ともなれば、江森さんは30分前に現地に到着。出迎えから乾杯、懇談、そして見送りまで、きめ細かく配慮し、絶対に中座することはしない。

「これまでの経験から、できるだけ早い段階で『すみません。ビール会社にいるんですが、お酒はあまり強くないんです……』と伝えるようにしています。確か、越山さんの場合も、ひと月ほどたってからご一緒した飲み会でお話ししました」