実家の床じゅうにペット・ネズミの糞

第二は、配偶者に先立たれた親が心理的な変化を起こす場合だ。寂しさを紛らわせるために犬や猫を飼い始める人が多いが、これが地獄を招き寄せる。

母親が入院している間に家を片づけてほしいという依頼を受けたことがあった。駆けつけてみると、床じゅうがペットの糞、ネズミの糞で埋め尽くされたドロドロのラビリンス状態である。

依頼者の母親は、この糞だらけの床に倒れているところを警察に発見され、病院に担ぎ込まれたのだ。

「どうしてこうなってしまったんですか」
「父が亡くなってから、母は誰も寄せつけなくなってしまったんです」

一度、ここまで汚れてしまうと掃除程度ではどうにもならない。床を張りかえてリフォームするか、リフォーム代を捻出できない場合は、床を洗浄してから樹脂を塗って臭いと虫を封じ込め、合板でも張るしかない。いずれにせよ、相当な費用がかかるし、売却も難しくなってしまう。

こうした惨事を避けるには、親とまめにコミュニケーションを取りながら、計画的に少しずつ実家の片づけを進める以外にない。老夫婦は平均すると2トントラック7~8台分の物を抱えているものだが、人間がひとり生きるには1台分で充分だ。

家財の処理費用は、人件費1人2万円、トラック1台1万円込み(レンタカーなら7000円+ガソリン代満タン返却3000円)で1立方メートル当たり1万円が相場。一間の押し入れ一杯分の片づけを自力でやれば、約4万円の節約になる。それを励みに、お盆は実家の片づけに精を出してほしい。

【家のゴミ分量と処理費用の目安】

◆床面積30坪の一戸建てから出るゴミ
⇒2tトラック7~8台分
◆「襖2枚の押し入れ1つ+天袋」のゴミ処理
⇒最低3万~4万円(人件費込み)※1平方メートル=1万円が相場人件費2万円/人、トラック1万円/台(レンタカーなら7000円+ガソリン代満タン返却3000円)etc込み
◆身軽な暮らしの目安(1人、3畳1間)
⇒2tトラック1台分以内

木下 修
アクト片付センター社長。1955年、横浜市生まれ。中央大学理工学部卒業。技術士(建設部門)として都市計画に数多く参画した後、人への奉仕を目指し便利屋業から需要の多い部屋の片づけ業に特化。
(構成=山田清機)
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