まるで独裁者の顔が透けて見えるよう

小池百合子氏の特徴は、小池劇場といわれるように、悪者をつくって「それと闘う私」の姿勢を見てくれという役回りでモノをいうことだ。7月の都議会選挙を意識しているものだから、片っ端から敵をつくり演じ続けている。

深谷 隆司(ふかや・たかし)
自民党東京都連 最高顧問、TOKYO自民党政経塾塾長。衆議院議員、郵政大臣、通商産業大臣等を歴任。

千代田区長選挙でも“都議会のドン”というレッテルを貼った内田茂都議相手の代理戦争だと喧伝してきた。マスコミもこの構図に乗って大騒ぎをした。特に小池氏が戦略的なのは、自民党都連や都議会自民党を敵視する一方で、安倍晋三総理とは握手をして直接対決はしない。進退伺いを出すだけで自ら離党をするわけでもない。立ち位置をうまく考えていることで、有権者は躊躇せずに石川雅己候補に一票を投じ、自民党支持者のうち61%を取り込んでしまった。“小池ブーム”が続いたことが、自民党推薦の候補者が惨敗した大きな敗因のひとつでもある。

小池陣営はこの勢いにのって、7月の都議会選挙には70人も立てるらしい。小池塾での試験で、にわかづくりの候補者を選んでも、いい人材が揃うはずがない。自民党から公認が得られなかった落ちこぼれや民進党までも必死で擦り寄っているようだが、茶番でしかない。かつての小沢チルドレンや橋下チルドレンのようにスキャンダルまみれの二の舞いになれば、一番困るのは都民である。

都知事になってからの小池氏の言動を振り返って、論語の中の有名な言葉である「巧言令色鮮なし仁」に限りなく近いという人もいる。この言葉は、「口できれいごとを並べ、態度をものやわらかく見せることが主になると、その種の人には、とかく大切な仁の心が薄くなりがちである」という意味である。

小池氏はかねて都議会各派の要望を予算に反映させてきた、いわゆる「復活予算」を都議会ブラックボックスの“悪”と印象づけ、知事が直接業界団体から要望を聞くヒアリングを行った。これは、かつて民主党幹事長だった小沢一郎氏が陳情窓口を自分ひとりのところにまとめ、陳情者の支持を一手に集めようとした、あの手法と同じなのである。

復活予算をあたかも都議会議員が勝手に分配してきたかのような感じを世間に与えて、誤解した都民からは大ウケだった。しかし、200億円は都庁の各部局から上がってくる予算の中で、都民にとって大事なものが欠けていれば、都議会の各会派が都民の意見を吸い上げて復活予算として要求するものだ。都議会が勝手に使っていたわけではない。

小池氏のヒアリングの場面を見ると、笑顔を振りまいてはいたが、「私ひとりが決める」と、まるで独裁者の顔が透けて見えるようである。特に特別顧問や特別秘書など側近の動きが、虎の威を借る狐の傲慢さで、いずれここから破綻が生まれるかもしれない。

築地市場問題、オリンピックに関わる問題など、次々に大向こうウケする発言が続いたが、目下、振り上げた拳の持って行き場が見えない。そこで豊洲移転問題で小池劇場のターゲットになったのが石原慎太郎元都知事だ。事実の究明は大事なことだが、百条委員会に登場する役者として石原氏が小池劇場を沸かす敵役になるのは確かだろう。豊洲移転延期で、設備投資など大変な資金を投入してきた仲卸業者は「死活問題だ」と大きな悲鳴を上げている。一応知事は補償問題に触れてはいるがどこまで救済できるのか心配だ。

東京都の予算は約13兆6000億円規模で、スウェーデンやインドネシアの国家予算と変わらないし、職員数は約16万9000人と世界的な大企業にも匹敵する。そういう国家や大組織のトップがどうあるべきかを考えると今の知事の姿勢には疑問符がつく。

それぞれの分野で責任をもたせて十分に仕事をさせ、組織全体がスムーズに流れて動くようにするのがトップの役割であり、都民ファーストの都政にもなるはずだ。あれもこれもと全部に口を挟んでいると、あとでひとつひとつ責任が問われることになる。その結果によっては、頼みの都民の支持も大きく変わる可能性がある。