だるくてぼんやり、なんだか仕事がはかどらない……。そのまま放置していると、取り返しのつかない結果に!? 食事、運動、睡眠を見直して、健康な脳と心身を取り戻そう。

海馬の萎縮で仕事力が低下

1961年、アメリカのハンス・クラウスとヴィルヘルム・ラープという2人の医師が、『運動不足病』という本を著しました。そこには今後、「運動不足」によって、頭痛、肩こり、胃痛、肥満、高血圧などの症状が引き起こされ、結果的に糖尿病、動脈硬化、心臓病、その他さまざまな内科的疾患をもたらすと記されていました。

それは現代、世界中に蔓延している「生活習慣病」の予言でした。世の中が便利になりすぎたことの弊害が始まったのです。

運動不足は、生活習慣病の原因となるだけでなく、やる気を低下させ、心にも悪い影響を及ぼします。現代ではさらに、社会的な疎外感や、過度の競争など、環境要因による慢性的なストレスが激しくなっています。身体と心の活力がともに低下し、「うつ病」が激増しているのです。外遊びなどの運動量が減った子供にも広がっており、運動不足の解消は、地球全体、全世代の課題なのです。

うつは脳のメモリーである「海馬」や「前頭前野」を萎縮させ、認知機能を低下させます。学習・記憶能力や実行機能(注意・集中、行動抑制、計画・行動力など)も損なわれます。

イラストレーション=中川原 透

頭がぼーっとして仕事がはかどらないという方は、海馬や前頭前野の機能が低下しているかもしれません。

しかし、海馬や前頭前野は継続的な運動によって肥大し、機能が高まります。適度な運動をするだけで、仕事の効率も上がり、高いパフォーマンスを発揮できるのです。

ここでため息を漏らす人も多いことでしょう。「でも、運動ってしんどいよね」と。日本人の運動継続率はおよそ2割です。続けられる人たちは、どんなスポーツをやっても続きます。ランニングを始めたと思ったらフルマラソンに出場し、それにも飽き足らずトライアスロンに挑戦する。もともと運動に対する適性が高い人もいますが、残る8割は長続きせずにやめてしまいます。