東京を国際金融都市に、「当面の対応」は年内

私は、日本が世界の大きな流れに乗り遅れることがないように、東京発の取り組みを加速させていきたいと考えています。かつて東京は「アジアナンバーワン」の国際金融都市でした。その地位を早急に取り戻す必要があります。このため東京都では「国際金融都市・東京」の実現に向けた検討体制を準備しました。具体的には長期と短期の2つの視点で会議体を設置します。

1つ目は、「国際金融都市・東京のあり方懇談会」。これは中長期の視点です。金融の活性化や海外の金融系企業が日本に進出するにあたって障害となる構造的な課題を洗い出したうえで、その解決に向けた抜本的な対策を検討します。ここでは税制の改革も議論の対象になるでしょう。日本人だけでなく海外の方からも意見をうかがいながら、私も参加して、金融の専門家や企業経営者と議論します。会議は公開で実施し、約1年をかけて構想を取りまとめていく予定です。

2つ目は、「海外金融系企業の誘致促進等に関する検討会」。こちらは、来年度から着手可能な短期の視点で議論をします。海外の資産運用会社・フィンテック企業の誘致や、行政手続きの英語でのワンストップ支援、特区を活用した生活環境支援などが対象です。日本人向けこそ必要かもしれませんが。実務者レベルで施策の立案に向けた意見交換を行うため非公開で実施し、年内に「当面の対応」を取りまとめて公開します。

日本の国内総生産(GDP)に占める金融・保険業の割合はわずか5%にとどまっています。英国ではGDPの約12%を金融業が占めています。仮に日本がその割合を10%まで引き上げられれば、GDPを約30兆円押し上げることになります。安倍政権の「成長戦略」には「GDP600兆円を2020年頃に達成する」という項目がありますが、経済成長のエンジンとして、首都東京が担う役割はあまりに大きいと思っています。国際的な状況を踏まえ、「今回がラストチャンス」という危機感で、スピード感をもって進めていきます。

小池百合子(こいけ・ゆりこ)
1952年生まれ。カイロ大学文学部社会学科卒業。テレビ東京『ワールドビジネスサテライト』などでキャスターとして活躍。92年政界に転身し、環境大臣、防衛大臣などを歴任。2016年、東京都知事に就任。
(構成=藤井あきら 撮影=原 貴彦 写真=AFP=時事)
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