とはいえ、いくら頑張っても結果がすべてです。談志はよく、「現実が事実だ」といっていました。そして「評価は他人がするものだ」とも。私も「おまえが頑張っているのはわかっているが、結果が出てないじゃねえか」と何度いわれたことか。周りはどう評価しているのか、その現実が事実なんです。

こうした厳しい言葉を自分の成長のための無茶ぶりととらえるか、パワハラととらえるか。違いはお互いの信頼関係だと思います。いま振り返ると、師匠の無茶ぶりは、愛情の裏返しだと理解しています。嫌いな人間をそばに置くわけはないし、ハシにも棒にも引っかからないような人間に、無理難題を吹っかけるわけはないのです。そのうえで、笑いのネタにできるかどうか。師匠の無茶ぶりは何でもネタになります。パワハラに対しては怨み辛みばかりで、到底ネタになんかできません。

それにしても、パワハラだのブラックだのとすぐにいわれる時代、上司も大変です。そこで管理職や上司の方へお勧めしたいのが、部下に“スキ”を見せることです。そのときに有効なのが「自慢話」「グチ」「悪口」の3つです。特に師匠は「グチは大事なんだ」といいながら、自分にもよくこぼしていました。弟子からすると、グチをいってもらえるようになったんだなとうれしいわけです。部下に対して弱い部分を見せることで、逆に人間関係が深まります。そうすれば無茶ぶりもパワハラにはなりませんよ。

▼立川談慶さんに学ぶ20代の振る舞い方「3カ条」

1. 敵意がないことを示すのが礼儀
ケガをしないよう、技の前に学ぶ「受け身」と心得る
2. 無茶ぶりには「倍返し」でリターンエースを狙う
上司の要求以上のことをして、主導権を奪い取る
3. 「現実が事実」とわきまえる
自分の評価は他人がするもので、その現実を素直に受け止める

立川談慶
落語家。1965年生まれ。慶應義塾大学卒業後、ワコールに入社。3年間勤務した後、91年、立川談志に18番目の弟子として入門。前座名は「立川ワコール」。9年半の前座修業を経て、2000年に二つ目昇進。「立川談慶」と命名される。05年、真打ち昇進。『大事なことはすべて立川談志に教わった』『落語力』などの著書がある。
(田之上 信=構成 南雲一男=撮影)
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