1日に何百通にも及ぶ膨大なメールを、日々の仕事の中でどうやって処理しているのか。「強いビジネス」の土台となっている、世界標準の習慣とは。
電子メールの業務活用では、日本企業の一歩先をゆく外資系企業。人によっては1日に200~300通のメールを処理することも珍しくない。
そんな彼らのメールマナーは、日本企業とはまったく異なる。いったいどんなメールが飛び交っているのか、外資系企業在勤、あるいは勤務した経験のあるビジネスパーソンに、その実態を尋ねてみた。
「社内宛てはもちろん、クライアントに対しても、基本は『簡潔にわかりやすく』です」
と語るのは、企業向けの保険系企業に勤めるAさんだ。本文は2~3行ごとを目安に、段落分けして読みやすく。1段落だけで完結するメールもよくある。宛名や発信者名はファーストネームのみ。「クライアント宛てのメールでも、普段やりとりしている方なら社名も役職名も書きません」。
たとえば、担当顧客から依頼されたミーティングを自社の重役に打診したとすると、返答はこんな具合だ。「ハイ、Aさん/ありがとう、今日調整しよう。いい仕事だ。/トム」(/は改行、原文は英語)。この例では、本文はたった1行で終わっている。
書き手・読み手の負荷を最小限に
余計なものを徹底的にそぎ落とす工夫は、仕事全体のスピードアップにも寄与する。
「いちばん極端だったのは、『無言』でのメール転送です」と言うのは、米系ITベンダーに勤務経験のあるBさんだ。日本法人の事業部長が、本社にトラブル支援のメールを送ったときのこと。先方の事業部長から開発現場まで、メールが順次転送されるのに要した時間は1時間ちょっと。しかも、全員が一言も書き加えないまま、しかるべき宛先にすぐ転送していた。「誰から落ちてきたメールかだけを見て、即座に何をすべきかを判断していると思いました」。
もっとも、超効率的な中にも一定のマナーはある。「どんな短いメールでも、冒頭に相手のファーストネームは必ず入れます」(米IT系)「件名の工夫は大事ですね。『重要:本日正午までに承認願います』など、要望を具体的に入れるのは基本です」(米金融系)などなど。