最近もイジメによる自殺、あるいはイジメの被害者が校内で加害者をナイフで切り付ける事件が発生した。こうした痛ましい出来事がなくならない。そこで、イジメ問題の相談もよく受けている教育アドバイザーでエッセイストの鳥居りんこさんにイジメ問題について語ってもらった。
わが子がイジメに。事態を悪化させる親とは
イジメはある日、突然わかる。
親が「わが子がイジメられている」という事実に気付くのは、イジメ開始日からはかなり経った後である。
イジメというものは哀しいことに親には「わが子の堤防決壊」の瞬間まではわからないものなのだ。
サインとしては食欲がなくなる、元気がなくなる、朝、起きられないなどもあるが大抵は心の悲鳴に体が追いついたとき、すなわち、体が学校に行くことを拒否したときにようやく親は気付くことができるくらいで、親には「青天の霹靂」感が漂う(我慢に我慢を重ねる子どもたちも多いので、その「堤防決壊」の瞬間が自死という最悪のケースもある)。
ここで親は焦りまくり、しばしばパニックに陥り、事態を余計悪化させる事例も散見される。ここでは、その「とてもじゃないが容認できない事態」が起こったときの親の対応策を論じてみたい。
【親の正しい対応策1:子どもの安全地帯を確保する】
何より優先させるべきことがこれだ。
わが子を詰問することよりも先にこれをやらなければならない。
これには、ふたつのやるべきポイントがある。まずひとつめが「体の居場所」を確保すること。
わが子に安全なところにいる権利があるということを伝えることだ。家庭内でも良いし、保健室でも良いし、習い事の空間でも良いし、とにかく安心安全だと本人が思える居場所を確保することが先決になる。
これを「逃げ」だと言う人がよく出るが、これはある意味、戦争なのだ。
形勢不利な場合、一時撤退はセオリー。安全を確保した上で戦術を練り直すのは当然である。
難関中高一貫校に子どもを行かせている親がよく「せっかく入ったのに、被害者が学校を休まないといけないのか!」と怒るが、事態は急を要する。大体「ここにしかない幸せ」は大した幸せではない。捨てる、逃げる、上等である。
次に「こころの居場所」の確保だ。早急かつ速やかにわが子の自尊心のチャージをしなければならないのだ。
それには親はわが子と「今日が今生の日」という思いで向き合う必要がある。
まず、わが子を褒めよう。加害者ではなく被害者であってくれたということを褒める。我慢をしてきたことを褒める。親にカミングアウトした勇気を褒める(これは親が思う以上にすごい勇気である)。同時に、SOSを出すことは誰にとっても恥ではなく、必要なことだと伝え、親としては子どもからのSOSは信頼の証で嬉しい旨を表明しよう。
そして、わが子に「君は何も悪くない」と伝えることも大切だ。さらにわが子に「誇りに思わせてくれてありがとう」と言えたならば完璧だ。あなたの子どもがイジメる側ではなかったという事実はあなたの子育てが間違っていなかったという証拠だからだ。
まずは親もここで自分の家庭に自信を持とう。