2009年3月19日(木)

なぜ「儲け話」に騙されるのか

プレジデントフィフティプラス 2008年4月17日号

著者
西田 公昭 にしだ・きみあき
立正大学心理学部教授

西田 公昭

静岡県立大学准教授、社会心理学者。1960年、徳島県生まれ。詐欺や悪徳商法、マインド・コントロール研究の第一人者。オウム真理教事件の8被告に対し、専門家証言・鑑定を行う。著書に『まさか自分が…そんな人ほど騙される』他。

西田公昭 構成=西川修一
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近年つとに増えた還付金詐欺、振り込め詐欺は、犯行の手口にも情け容赦がなくなってきた。貧困層の補助金狙いや、ろうあ者が標的にされたケースもある。どんなに弱い者であれ「騙されたほうが悪い」と言わんばかりだ。

貴重な財産を狙う輩は地震と同じで、不意にわが身を襲ってくる。しかし、多くの人は基本的に無防備だ。

そもそも人は物事を判断する際、五感から収集した情報をもとにまず仮説を立て、検証する……という手順を踏む。だから、「騙されている」という仮説を立てない限り、どう検証しようと騙される要素を見逃してしまう。

一度も騙されたことがない人が「自分は騙されない」と思い込んでも、そうした幸運が今後も続く保証はどこにもない。「一度撃退したことがある」と自信満々の人は、違う手法で迫られた場合にかえって危険だ。一度騙された経験があれば、大病を患ったのと同じで警戒するだろう。が、「一度被害に遭ったから、二度目はないだろう」という発想は逆さま。病気同様、一度かかる者は再発の可能性が高いのだ。

50代以上の中高年の被害が多いのには理由がある。最もお金を持っている層であることに加え、「真面目でいい人」「義理人情」といった失われつつあるマナーをきっちり持っている。さらに長年生きてまだ被害に遭ったことがなく、安心しているのだ。

また、老後の不安から「もうちょっと増やしたい」という心理に加え、かつて年7~8%の高利回りが普通だった経験から、「いい話がどこかにあるのでは」という思いが頭の片隅にあるのも騙される一因である。

詐欺を退けるには、まず自分の弱点を知っておかねばならない。弱点とは「自分の欲しいもの」。例えば金、健康などが代表例だ。そして、「自分を騙すならどう騙すか?」を考えるところから対策を練り始めるとよい。

自分についてチェックすべき心理は、(1)自分は大丈夫と思っている、(2)非科学的思考の持ち主、(3)ストレスや不安定な状態に弱い、(4)権威に弱い、(5)誰に対しても嫌われないようにする、(6)集団に影響されやすい、と6つある。私の知る範囲では、どの詐欺もこの6つすべてを駆使してたたみかけてくる。

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