では、どうすればよいのか。必要なのは「知識」「練習」「相談」だ。

最も大事なのは知識だ。しかし、振り込め詐欺については知っていてもやられてしまう。これは例えば、先述の6つの心理のような基礎を知らないから。ニュースで聞いた手口一つしか知らないのでは役に立たない。基礎がないと、応用が利かないのだ。銀行のATMの前で還付金詐欺防止のチラシを見て、犯人に「これと似ていますね」と電話して、「いやそれとは違う」「そうですか」などとやり取りしつつお金を振り込んだ、という例すらある。

より深い基礎知識を身につけるには、5分や10分でいいから家族どうしで詐欺師役を決めてシミュレーションをするといい。ストレスや不安、恐怖を感じつつノーと言うのがいかに難しいかがわかる。自ら考え、練習しないと現実の場面で使えない。家電量販店の店員やテレビ番組相手に「突っ込み」を入れる練習もいい。

また、いろんな人に相談し、助けを求めることだ。一対一ではなく、第三者がその場にいるだけでも状況は違う。詐欺師はあれこれ言って、そういうシチュエーションを絶対に避けようとするだろう。実際に詐欺に遭った後も相談は大事だ。対応が早ければ、取り戻せるかもしれない。

(構成=西川修一)
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