このような単純なロジックを東京都民に気付いてもらうためには、現在の築地の状況をしっかりと公にすればいい。

豊洲には最先端の技術が結集した。汚染した地下水は外に出し、足りなくなった分は水道水を入れるというウルトラCもやっている。まだ地下水管理システムがフル回転していない状態だが、すでに地下水は飲んでも大丈夫くらいのきれいさになっている。これに地下水管理システムがフル稼働すれば、さらに地下水はきれいになる。

もう飲んでもいい状態にまでなった地下水から、基準以内の物質が出たことで大騒ぎし、基準と同程度に近い物質が出てさらに騒ぐ。今自分たちが住んでいる土地の下の地下水のことは何も考えず。

豊洲の地下水が地表に出ることはない。そして仮に震災等で噴出したところで、所詮水道水が噴出したのと同じだ。

ところが築地市場では、8月の大雨で下水道があふれ、そこから下水が地表に噴出したのに誰も問題にしなかった。下水道の下水って、これほど不衛生なことはない。下水が築地で噴出したのに、豊洲で飲料用レベルの水が噴出する可能性を心配する。さらに豊洲の建物内に環境基準以内のベンゼンが検出されたと騒ぐ。ところが排ガスに晒されている築地の方がベンゼン値は高い。

築地だけではない、東京の飲食店が集まっている場所のベンゼン値を計測してみればいい。そしてアスファルトの下の土の状態を、またその地下水の状態を計測したらいい。そうすれば、豊洲で今騒いでいることが、バカ騒ぎ、カラ騒ぎであることがはっきりするだろう。俺達って、もっと汚いところで、平気で飲み食いしているよね、って。

豊洲が目標としている数値がどれほどレベルの高いものなのか。技術会議と東京都はそれを達成するために莫大なカネをつぎ込んでありとあらゆることをした。そしてもし数値が少し悪ければ、それに対する対策を講じるために、市場建物の下に地下空洞を作った。建物下は土を掘り返すことはできない。だから空洞を設けたのだ。ところが、この空洞について小池さんは安全性に問題があるものとして問題提起して今のような大騒ぎになった。

このようにして、現在、豊洲はこの数値を達成している。もし仮にほんの少し基準オーバーの数値が出たとしても大騒ぎする必要はない。地下水管理システムや地下空洞を使ってそれに対する対策を講じることができる。

「今の豊洲の状態をしっかりと都民に伝えるためには、まず現・築地市場の、大気・土壌・地下水の状況の数値を表に出して比較すべきだ」

……と、テレビ番組の討論中に力説したら、ゲストに来ていた築地の業者さんが、苦笑いして「それは勘弁してくれ」と言っていた。築地の状況は表に出せないよ、と。

もうこれだけで豊洲の騒ぎが、カラ騒ぎであることが分かるよね。東京都民は、現築地市場や、自分の住んでいる地域の環境、そして東京全体の環境と豊洲を比較して、豊洲の安全性についてもうそろそろ冷静に判断すべきだ。

※本稿は、公式メールマガジン《橋下徹の「問題解決の授業」》vol.24(9月27日配信予定)からの一部抜粋です。

(撮影=市来朋久)
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