すっかり定着した感のある「終活」という言葉。「人生のフィナーレ」を迎えるにあたり備えあれば憂いなしと、誰もが思うところだろう。だが、そこには「落とし穴」が潜んでいる――。

新たな選択肢として人気集めるサービス付き施設

介護施設で事件や事故が多発している。何か重大な欠陥があるのか? 介護・医療ジャーナリストの長岡美代氏は語る。

「介護ビジネスは、公的保険だけでも10兆円の巨大市場です。残念ながら、そこには高齢者を『儲けの道具』としか考えない不届きな事業者も目立つようになっています」

ブラック介護事業者のやり口のひとつは、「不必要な支援を押し付ける」こと。望まないサービスを半強制的に提供するもので、例えば「囲い込み」。その主な舞台となるのが、いわゆる「サ高住」だ。

これはサービス付き高齢者向け住宅(別名「サ付き住宅」)の略称で、2011年に制度化。多くは家賃数カ月分の敷金で入居できることもあり、民間介護施設の新たな選択肢として注目されている。国が一戸あたり最高100万円の建設費補助を出すため、次々と誕生しているのだ(図を参照)。

介護施設といえば、昔からある特別養護老人ホーム(特養)などを頭に浮かべるかもしれない。住まいと、24時間体制の介護・看護サービスの提供が一体になっていて、各職員も常駐している。終身利用可で低コストゆえ、介護施設の中で最も人気が高く、待機者も約52万人いる。

サ高住の場合、リーズナブルなところは特養に似ているが、入居者は、原則25平方メートル以上の住まい(キッチン・浴室・トイレなど完備)の賃貸契約とは別に、ケアマネジャー(以下、ケアマネ)と相談しながら訪問介護やデイサービスなどの介護事業者と別途契約する仕組みだ。

ケアマネは、要介護者の体の状態や意向を踏まえてケアプランを立て、サービス事業者をコーディネートする司令塔的役割を担う。ところが問題となっている「囲い込み」では、このケアマネ、介護サービス事業者、そしてサ高住が「グル」になって、入居者の意向を半ば無視し、介護漬け状態にする。

「介護サービスを提供する事業者は、入居者が住むサ高住の運営母体の系列企業であることが多く、中立的で入居者の味方であるべきケアマネが運営母体に雇われていることも。こうして利用者無視の過剰サービスや、手抜きサービスがまかり通ってしまうのです」