機会は案外与えられている、が、それを見落としがち

もちろんそのポジションについたら、仕事がまっとうできるだけの能力を身に付けておかなければならない。それは言うまでもありません。そう考えて、まずはスキルを磨いたり、できることを増やしたりすることからスタートしがちです。資格を取る人も多いですよね。

しかしその努力を実らせるためには、多少図々しいと思っても、「やりたい」という意欲を前面に押し出して機会を少しでも増やしておかなければならない。「自分が~自分が~」と、前に出てポジションをゲットしてしまう人を見ると「あんな肉食系にはなりたくない」などと揶揄(やゆ)しがちですが、やりたいことをやるための手段としては、極めて筋が通っています。誰にも見えない場所でなにかを言っても、それは単なる独り言。厳しいようですが、なにも得ることはできません。

「そこまで自分を押し出して、売り込む勇気はない」という人でも、チャンスはたくさん転がっています。例えば、組織の中のナレッジを共有したり、新しいアイデアを募集したりといったイベントを定期的に開催しているという企業はたくさんあります。そういう場を積極的に利用するのも手です。

いま所属している組織以外に活躍の場を求めるという方法も、当然あります。ソーシャルメディアなどを利用して、自分が取り組んでいること、将来関わりたいことを発信することで、どこかから声が掛かるといったことも、それほど珍しいことではなくなりつつあります。

「やりたいことをやりたい」とあなたは周囲に伝えられているか

そう考えると、機会はたくさん、あなたの周囲にはゴロゴロと転がっているのです。それを見落とすことなく、チャンスを貪欲に生かすことが、やりたいことができるようになる、たった一つの方法なのかもしれません。「能力があってもやりたいことなんてできない」と悩んでいる人がいたら、まずは「やりたいことを周囲に知ってもらう」ことから始めてください。

逆に、それすらできないとしたら、自分のやりたいことは「本当にやりたいことだったのか?」と自問自答するべきでしょう。厳しい言い方ですが、「やりたいことがある」というセリフが「何かから逃げる言い訳」になっているはずですから。

サカタカツミ/クリエイティブディレクター
就職や転職、若手社会人のキャリア開発などの各種サービスやウェブサイトのプロデュース、ディレクションを、数多く&幅広く手がけている。直近は、企業の人事が持つ様々なデータと個人のスキルデータを掛け合わせることにより、その組織が持つ特性や、求める人物像を可視化、最適な配置や育成が可能になるサービスを作っている。リクルートワークス研究所『「2025年の働く」予測』プロジェクトメンバー。著書に『就職のオキテ』『会社のオキテ』(以上、翔泳社)。「人が辞めない」という視点における寄稿記事や登壇も多数。