国債消化の鉄のトライアングルにヒビが
「最強企業集団」三菱グループが、参院選の勝利を受けて安倍晋三首相が加速しようとしている「アベノミクス」に色濃い影を落としている。三菱東京UFJ銀行がマイナス金利政策に反旗を翻したのをはじめ、三菱系企業が何かとブレーキとなっているからだ。
三菱グループは首相の母校、成蹊大学を運営する学校法人成蹊学園を創設し、本来、首相の“後援会”的存在でもある。現状をみる限り、皮肉にもアベノミクスの足を引っ張り、その役割を果たしていない。とりわけ、グループの顔である三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)、三菱商事、三菱重工業の「御三家」がその元凶なのだから、事は重大だ。
極めつきはMUFG傘下の三菱東京UFJ銀行で、財務省は同行からの申請を受理し、国債入札への特別参加者(プライマリーディラー)の資格を7月15日付で取り消した。この資格は国債入札に有利な条件で参加できる半面、国債発行の4%の購入が義務付けられる。このため、同行は日銀が2月に実施したマイナス金利政策のもとで国債を持ち続ければ、損失が発生しかねないと判断し、資格返上を求めていた。
現状で同行に追随する動きはないものの、メガバンク最大手の同行が真っ先に離脱に手を挙げたことは、政府・日銀・銀行大手の3者で形成してきた国債消化の「鉄のトライアングル」が崩れると、衝撃を持って受け止められた。
マイナス金利政策を巡っては、MUFGはこれまでも平野信行社長が企業や家計の「懸念を増大させている」と副作用を指摘し、今回の国債特別入札者の資格返上と併せて、首相の後援会としては相応しくない行動に映る。