新しいIT環境の導入、同僚とのコミュニケーション、上司とのやり取り、後輩への指導……私たちの職場はストレスで満ちあふれている。年々増えるばかりのストレスとどのようにうまく付き合っていくかで、仕事の質も大きく左右されると言っても過言ではない。
4000名以上のビジネスパーソンをカウンセリングしてきた経験をもつ著者の鈴木雅幸氏は、「一流のビジネスパーソンほど、感情を整えるのが上手」という。しかも5秒という短い時間で整えることが可能なのだ。元トラック運転手の経験を持ち、心理カウンセラーとして活躍する鈴木雅幸氏が、すぐに実践できる「感情の整え方」を伝授する。

共感できる仲間と過ごすのは楽しい理由

私たちは一人ひとり、感覚から価値観、ものの見方や考え方、好き嫌いまで十人十色でみんな違います。しかし、ある程度共感できる部分や似ている部分のある仲間と過ごすことは、私たちにとって喜びではないでしょうか。そういった仲間と一緒に過ごすことはとても有意義で楽しい時間です。

『感情は「5秒」で整えられる』(鈴木雅幸著、プレジデント社)

では、ここで価値観や考え方や好き嫌いといった尺度のほかに、もう1つの尺度を用いて、人や人間関係というものを考えてみましょう。それは「葛藤のある人と葛藤のない人」という尺度です。

ここで話す葛藤は、怒り、不満、嫉妬、孤独、不安といったネガティブな感情が非常に大きい状態を表します。そして、行動の選択や意思決定が、そのネガティブな感情に突き動かされるような人が葛藤のある人といえます。

葛藤のある人の常識というものは、実は、葛藤のない人の常識とはなかなか相容れないものです。両者は感覚的にもまったく別次元の世界に生きているようなものだからです。

では、それらの常識とは、どのようなものでしょうか。まとめると次のようになります。わかりやすくするために、少し極端に書いてみます。

「葛藤のない人の場合、基本的に人間は信頼できるもの、優しいもの、人間関係は楽しく温かいもの、人生は感動と感謝、そして喜びの多いものだという常識によってものごとを考え、行動する。

一方、葛藤のある人の場合は、人は信頼できない、敵意を胸に秘めているもの、人間関係は油断ならない苦痛に満ちた怖いもの、人生は生きれば生きるほどつらく、希望のないものだという常識を持っており、その常識を基準にしてものごとを考え、行動しがち」