AIの進化を加速する「ディープラーニング」

人間(に限らず生き物)の脳はコンピュータのような電子回路と変わらない。脳内の神経細胞を目まぐるしく往来し、われわれの思考と行動を制御しているのは、結局のところ電気信号だからだ。この分野の研究者の多くが共有する「人の脳に伍する人工知能(AI)は必ず実現できる」との信念の根拠は、そこにある。

とはいえそれは簡単なことではない。AIの「ブーム」は過去2度(1960年前後と80年代から90年代にかけて)起きたが、ともに世間の期待を盛り上げるだけ盛り上げながら、技術的な壁に行く手を阻まれる形で、いつしか鎮まった。

以来ほぼ20年が過ぎた今、またAIが脚光を浴びている。米グーグルの囲碁AI「アルファ碁」が韓国のプロ棋士を破ったことをはじめ、AIの快挙や近未来の可能性が盛んにメディアを賑わせていることはご存じだろう。

本書はAIに3度目の春をもたらした新技術「ディープラーニング」を、50年来のブレークスルーとして紹介する。努めて冷静に<(現在のAIは)買う価値のある宝くじだと思う>といった表現を選びながらも、この新技術の延長線上にAIの大きな飛躍がある可能性を熱く論じる。

『人工知能は人間を超えるか』松尾豊 KADOKAWA/中経出版

ディープラーニングは数ある機械学習、つまりコンピュータに自分でデータを読み込ませ、学習させる手法のひとつだ。一番のポイントは、コンピュータが自ら認識対象の特徴を抽出し、概念を獲得すること。猫の画像を無数に読み込むうちに共通のパターンを読み取り、ほかの動物と区別できるようになったりする。従来、コンピュータに読み込ませるために物事の特徴を見出しデータ化する作業は、人間が行っていた。それをコンピュータが自分でできる可能性を示したことの意味を、著者はことさら重視する。

<簡単な特徴量をコンピュータが自ら見つけ出し、それをもとに高次の特徴量を見つけ出す。その特徴量をつかって表される概念を獲得し、その概念をつかって知識を記述するという、人工知能の最大の難関に、ひとつの道が示されたのだ>