「マイナス金利は追い風」だったはずが
住宅業界がマイナス金利政策の効果に疑心暗鬼を強めている。日本銀行が2月、未知の領域に踏み込んだマイナス金利政策が金融機関に住宅ローン金利引き下げを促し、住宅市場に追い風となるとの期待を裏切っているからだ。その理由は、マイナス金利導入で再び「円安・株高」局面への流れを生みたい政府、日銀の思惑に反し、「円高・株安」に逆作用した結果、株式など資産効果が剥げ落ち、消費者の住宅購買意欲を削いだ点にある。
確かに、消費税8%への引き上げ後、市場回復にもたつく住宅業界は、マイナス金利導入に伴う住宅ローン金利の低下で受注拡大に弾みが付くと期待を膨らませていた。実際、戸建て住宅最大手、積水ハウスの戸建て住宅受注額は2月速報値で前年同月比14%増と、消費増税以降初めて2桁の伸び率に乗せた。阿部俊則社長兼最高執行責任者(COO)は「2月受注にはマイナス金利の影響が出ている」と、素直にこれを評価した。他の住宅大手首脳も「マイナス金利は追い風」と認め、低調な住宅市場にとってマイナス金利は福音に響いた。
しかし、これも長続きせず、積水ハウスの3月受注額速報値は前年の横ばいに沈んだ。大和ハウス工業、住友林業、ミサワホームの住宅大手も3月受注は、軒並み2月の勢いが鈍った。3月は住宅大手のかき入れ時であり各社は例年通り大型イベントを全国で繰り広げたものの、肩すかしをくらった格好だ。
この状況を受け、住宅業界にはマイナス金利が住宅市場回復の起爆剤となるかを疑問視する見方が生まれている。営業の現場は、35年長期固定金利型である住宅金融支援機構の「フラット35」を借り入れた場合、金利低下で最終的な支払総額が十数%減るとの試算を呼び水に、住宅購入の誘い込みに動くが、食いつきは弱い。