入社3年間の評価が20年後にも影響する──。組織行動学には、そんな調査結果がある。しかし諦めるのは早い。逆転の方策はある。

転職を繰り返す若者はなにを求めているか

どうしても上司と反りが合わないということもあるでしょう。残念ながら部下は自分の上司を選ぶことはできません。きちんとした評価のできない上司に仕えるのは大変だと思います。しかしそこで投げやりになってはいけません。組織のなかでは、評価のできない上司も、実力のある部下も、周囲の人間がきちんとみています。そして実力のある人はどこかのタイミングで引っ張りあげられるものです。

「セレンディピティ(serendipity)」という考え方があります。「偶察力(偶然を察知する能力)」とも訳される考え方です。多くのビジネスチャンスは偶然のような奇跡からスタートしています。いつ、どんなチャンスが来るかはわかりません。果報を寝て待つのではなく、常日頃から構えておくことです。キャリア形成のパターン自体も、「入社後3年でその後の会社人生が決まってしまう」といった伝統的なものから、セレンディピティを発揮する新しいパターンへの変化が進んでいます。

ここではスイスの国際経営開発研究所(IMD)のグループが、キャリア研究の重鎮マイケル・ドライバー教授のキャリア・コンセプトをベースに、昨年8月の米国経営学会で発表した4つの分類をご紹介します。

第1は「階層的キャリア」。ピラミッド型の組織構造のなかで、組織の「タテ」の階段をいかに上っていけるかが、キャリアの成功を判断する基準となります。「終身雇用」や「年功序列」が前提で、バブル経済崩壊ごろまでは主流でした。

第2は「専門的キャリア」。自身の天職といえる仕事領域を見つけ出し、そのなかでより高い専門性(技術や能力)を追求するものです。

第3は「スパイラル・キャリア」。比較的早い段階で経験した仕事領域を核としつつ、5~10年ごとに新たな領域に挑戦するもので、中心から周辺へと、関連性のある分野でらせん状にキャリアを形成します。

第4は「変動的キャリア」。自身にとって新しいことや変化とは何かを重視し、新しい経験を求め、前向きに仕事領域の変更や転職を繰り返します。スパイラル・キャリアとの違いは、前職や以前の職務経験と、その後に、秩序だった連続性や一貫性を求めない点です。ひとつの仕事領域や組織に従事する期間も平均2~4年程度と必ずしも長くありません。仕事を通じて、やりがいや新たな経験を得られたかどうかで、キャリアの成功を捉えるといいます。

「入社後3年でその後の会社人生が決まってしまう」は、この4つのうち「階層的キャリア」のパターンです。かつては主流でしたが、いまは個人のキャリア観は多様化しています。「出世を望まない」と考える人も増えていますし、外部環境の激しい変化を踏まえれば組織にキャリア形成を完全に委ねるのは危険です。会社組織としても、こうしたキャリア観の変化をネガティブに受け止めるのは得策ではないでしょう。こうした変化は、キャリアの担い手の中心が、組織から個人へと移行しつつあることの表れだからです。