入社3年間の評価が20年後にも影響する──。組織行動学には、そんな調査結果がある。しかし諦めるのは早い。逆転の方策はある。
「成果主義」が生んだ、おべっか社員の台頭
日本の会社組織における「評価」の歴史を振り返ったとき、最も大きな変化は、2000年前後に注目を集めた「成果主義」への対応です。
それまで個人への評価は「年功・能力主義」が主流でした。ベースにあるのは能力に応じて部長や課長などの職務を与える「職能資格制度」。この場合、能力への評価は基準が抽象的で、結局は在職年数という「年功」が重視されがちでした。
そこで注目を集めたのが「成果主義」です。セットになるのは「目標管理制度」。つまり従業員一人ひとりに具体的な目標を設定させ、その達成度で評価する仕組みです。
2000年前後、年功序列型の賃金制度への批判を追い風にして、日本の会社組織には成果主義が一斉に拡がりました。ところが、導入からしばらくすると、「成果主義は失敗だった」との声も目立つようになりました。その批判のひとつが、「評価が偏っている」というものです。今回のテーマである「なぜか評価の高い人」という存在も、不平等な評価をめぐる不満といえるでしょう。
なぜこうした問題が起きるのか。私の専門である組織行動学でのある研究結果をご紹介しましょう。
名古屋大学名誉教授の故・若林満氏は、大手百貨店の新入社員を対象に、23年間にもわたる追跡調査を行いました。その結果、(1)入社後3年間の上司との信頼関係(2)入社後3年間の職務実績(上司・同僚などからの多面評価結果)が、長期的なキャリアの成功に強い影響を与えることがわかりました。
すなわち、入社後3年間の2つの要因が、入社13年後の「昇進スピード」「職務成果(パフォーマンス)」「給与水準(給与・ボーナスの支給額)」に、さらに入社23年後においても「昇進スピード」に対して、強い影響を与えていたのです。
組織行動学では「上司との信頼関係」を「上司-部下間交換関係(LMX/Leader-Member Exchange)」と呼びます。上司は部下に、ある水準の成果を期待する。部下はそれに応えたり、応えられなかったり、期待以上の成果を出したりする。こうしたやり取りは、上司と部下の心理的な交換関係といえます。若林氏の調査によれば、組織内で長期的なキャリアの成功をつかむためには、「LMX」の構築が欠かせません。入社3年目というキャリアの初期の段階において、上司の期待を超える水準で仕事をこなし、確実に社内評価を固めておくことで、その後の出世ルートに乗りやすくなるわけです。