「仕事ができる人」とは「できるように見える人」

それでは「仕事ができる」とは、どういうことなのでしょうか。「できる」という言葉は評価を含んでいるわけです。評価には自己評価と他者評価がありますが、この他者評価を本人がどれだけコントロールできるか、つまり極端に言えば「本当に仕事ができるかどうか」に加え、「できるように見えているかどうか」を自己管理することが重要です。

どうすれば周囲の人に認めてもらえるか、印象がよくなるか。心理学には「印象管理」という考え方があります。「仕事ができる人」は、印象管理がうまい人だと言い換えることもできます。自分自身では成果を出していると考えていても、その仕事を評価するのは上司なり他者の目によるわけです。上司の印象が悪ければ、「できるように見られる」というのは難しいはずです。

ただし印象管理にもさまざまな種類があり、効果的でないものもあります。興味深いことに、私たちが実施した共同調査では、上司に媚びたり、お世辞を言ったりする人は、評価が低くなることがわかっています。

組織行動学では、上司に媚びたり、へりくだったりする行動を「迎合行動」と呼んでいます。我々の研究チームが2007年の産業・組織心理学会で発表した研究報告では、迎合行動をとる人は、翌年の人事考課が下がる傾向がみられました。上司にはお見通しなのです。

人はなぜ迎合行動をとるのでしょうか。仕事に対するモチベーション(達成動機)は2つに分類できます。ひとつは他者をしのぎ、他者に勝つことで社会から評価されることをめざす「競争的達成動機」。もうひとつは、他者との競争にはとらわれず、自分なりの達成基準への到達をめざす「自己充実的達成動機」です。

このうち「競争的達成動機」をもつ人は、迎合行動をとりやすく、結果として評価でも損をしています。仕事の意味を十分に理解し、自分なりのやりがいをみつけられている人ほど、評価も高くなりやすいのです。

働きかけの方法は、迎合行動だけではありません。組織行動学では、部下からの上司への働きかけを「上方向への影響戦略」と呼び、その種類を「合理性(理由や根拠を説明する)」「迎合性(へりくだる、機嫌をとる)」「主張性(はっきりと要求する)」「権威性(より地位の高い人の支持を得る)」などに分類しています。既存の研究によれば、このうち上司に最も影響力をもつのは合理性の影響戦略。一方、権威性や主張性はあまり影響力をもたず反発や抵抗を招くことがわかっています。

つまり上司は、部下から理由や根拠を説明されることを期待しており、それに応えてくれる部下ほど、いい印象をもつのです。反対に、自分の考えばかりを主張したり、周囲に媚びてばかりの部下は、信頼されません。当たり前のように思われるかもしれませんが、やはり上司は部下をよくみているのです。