2015年12月9日(水)

吉本興業で学んだ成功する「他人本位」マネージメント術

PRESIDENT Online スペシャル

著者
鈴木 工 すずき・たくみ
ライター

1974年、神奈川県生まれ。芸人関係の記事を中心に執筆。言論誌『kotoba』に「無名の名・芸人伝」を連載中。尾田栄一郎著『ONE PIECE STRONG WORDS』、犬丸一郎著『帝国ホテルの流儀』(共に集英社新書)などの構成も担当。

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鈴木工=文
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企業におけるマネージメントといえば、上司が部下を統制するのが一般的だ。しかしその関係性に限らないのが、芸能界のマネージャーである。時には芸能人志望の素人を指導し、時には一時代を築く大物と時間を共にする職業。一体どんな気遣いをしながら、タレントをマネージメントしているのか、話を聞いた。

馬を手なずける騎手であれ

「マネージャーなんて基本、何もできないんですよ。本当はタレントさんに『全部自分次第ですから』と言いたいぐらい。でもそれはあまりに無責任すぎるので、少しでも手伝えることって何かな……と模索する感じです」

取材前から予感はあった。丁重なメール。挨拶の低い物腰。謙虚な回答が返って来るに違いないと思いながら、マネージャーの役割を問うと、やはり想像どおりだった。

発言の主は、文化人のマネジメント及び興行の企画制作会社スラッシュパイルの代表を務める片山勝三氏だ。97年に吉本興業(現よしもとクリエイティブ・エージェンシー)に入社し、東京で今田耕司、極楽とんぼらのマネージメントを担当。その後、大阪に異動し、キングコングや南海キャンディーズなどの若手芸人を売り出した。退社した今でも「敏腕」として名前のあがる1人である。

当時、どんなマネージメントを心がけていたのか。

「芸人さんが100人いたら100通りの向き合い方があると思うんです。だから僕は各々の個性を見ながら、『ムリしない方がええんやろうな』とゆるゆるやってました。この考えは今も興行の企画を考える上で基本となっていますね。

気をつけていたのは、芸人さんにとって居心地いいペースを崩さないことですね。話しかけられるのを嫌う人だったら、必要以上に楽屋にいませんし、『どう思う?』と聞かれたら答えますけど、自分からあまり『こうした方がいいのでは』と強く助言したりはしませんでした」

いわく、「潮の流れは自分では作らない」。演者・マネージャーという一定の距離感と緊張感を失えば、その信念は実現できなくなる。だからどんな若手に対しても敬語を使い、酒を飲んでも仲良くなりすぎないように意識していたという。

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