2015年11月18日(水)

究極のマネジャーは「合唱指揮者」である

PRESIDENT 2015年3月30日号

著者
荻野 進介 
文筆家

1966年、埼玉県生まれ。一橋大学法学部卒業後、PR会社を経て、リクルートにて人事雑誌『ワークス』の編集業務に携わる。2004年退社後、フリーランスとして活動。共著に『日本人はどのように仕事をしてきたか』『史上最大の決断』など。

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文筆家 荻野進介=文
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日本に数えるほどしかいなくて、しかも就くのに相当ハードルの高い職業。指揮者もその1つだろう。その指揮者のなかにも、合唱指揮者と呼ばれる人がいるのをご存じだろうか。

オーケストラを前にタクトを振るのが普通の指揮者だ。それに対して、合唱指揮者は合唱団を指揮するというよりは指導する。合唱は、「声」という人間そのものが出す音を相手にするため、音取りが難しい。しかも、声には「言葉」が関係する。発音が悪ければ、矯正までしなければならない。

三澤洋史氏は日本人合唱指揮者の代表ともいえる人物で、現在、日本のオペラの殿堂、新国立劇場専属という立場にある。「オーケストラは外国から偉い指揮者が来ていきなりタクトを振っても、それなりの音が出ますが、合唱はそうはいきません。声合わせ、言葉の矯正、それに暗譜までさせなければならない。そうやって作った音を、今度は指揮者に渡し、場合によっては指揮者の要望を汲んで音を作り直すまでが私の仕事です」。

三澤洋史氏

合唱の音作りでは、指揮者よりも現場に近い立場にあると同時に、指揮者の下につく中間管理職でもある。指揮者が中小企業の社長だとしたら、合唱指揮者は部長、あるいは指揮者がプロジェクトマネジャーだとしたら、サブマネジャーという位置づけだろうか。オペラは音を売る。企業は商品やサービスを売る。売れるものを作って客に届けるという意味では、劇場も企業も同じだ。さらに、三澤氏は劇場専属という身分だから、より企業人に近い。

ここでは、三澤氏の合唱指揮者としての仕事ぶりを通して、企業のマネジメントに応用できる点を探ってみよう。

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