経営方針の違いから創業者の父親と社長に就いた娘が対立する騒動で世間の注目を集めた大塚家具。3月の株主総会で娘の大塚久美子社長の続投が決まり、混乱は収束に向かっているが、経営の建て直しは道半ば。新しい事業戦略を打ち出し、2015年中間決算は赤字予想から一転黒字を達成した大塚久美子社長に単独インタビューをした。

家具業界は季節変動が大きい

――すでに2015年も下期に入りましたが、今年の業況を振り返るとどうですか。

大塚家具は12月決算なので、8月6日に中間決算を発表しました。家具業界は季節変動が大きく、例年、春の引っ越しシーズンや婚礼などがある4月から6月までの第2四半期、それに買い替えシーズンである10月から12月までの第4四半期が繁忙期となっているのですが、今年の1月から3月までの第1四半期はかなり大きな赤字になってしまいました。それをカバーできるかが大きな課題だったのですが、幸い、第2四半期は大感謝フェアで売り上げをいただけましたので、中間決算は当初の計画を若干上回る形で締めくくることができました。

大塚久美子・大塚家具社長
――新生大塚家具は中長期的な経営戦略ではどのような方針ですか。

過去1年間に家具を買った方に大塚家具に来なかった理由を調査すると、「仕組みがわずらわしい」「価格が高そうに感じる」という理由が全体の8割を占めていました。ここを解消しないと顧客のベース自体が広がりません。実際に価格が高いのかというと、そんなことはありません。当社はメーカーから直接、物を仕入れて安く売ることで成長してきた企業です。これは創業の理念であり、伝統なのです。コストパフォーマンスで負けるような商品は置いていないんですが、高いと思われている。その背景には店舗に入りづらいことがあります。実際に見ることができなければ広告だけの情報です。それでは、どうしても偏った情報しかお客さまに届けることができず、すべての商品を見てもらうのが難しい状態となっていました。

当社は割高ではないけれども高級な商品も扱いますから、どうしても高く見えてしまうのです。これまでお店は入りにくい仕組みになっていましたので、その誤解が払しょくされずにずっと残っていました。これが顧客の間口を狭める結果になっていましたので、ここをまず解消することを進めていかなければなりません。しかしそのためには間口が狭いことを前提に進められてきた仕組み全体を直していかないと対応できないので、ここをまず修正していくということが大切だと考えています。

中期経営計画では、2017年まではビジネスモデルを転換していくプロセスなので、それほど高い利益水準を予定していません。その間は株主さまには配当という形でご辛抱いただく。しかし、もともとの商品力は強いですし、社員の商品知識も高いですから、次期中期経営計画はもう少し高い利益水準が見込めると考えています。