社外取締役制度はなぜ、導入されたか

社外取締役という日本企業を弱体化させるだけの制度がはじまった。早速、私の知り合いの経営者が悲鳴をあげている。社外取締役に就任する大学教授や官僚OBは、副収入が増えるのが嬉しくて「制度撤廃!」などとは決して口に出せないだろうから、私の出番ということになる。

6月1日、金融庁と東京証券取引所によって、企業のあるべき姿を示した「コーポレートガバナンス・コード」(企業統治原則)の上場企業に対する適用を開始した。日本企業の透明性を高めてグローバルな投資を呼び込み、成長を促すことになるという。その中で、取締役会等の責務の一環として「上場会社は独立社外取締役を少なくとも2人以上選任すべき」とされていることだ。あえて「独立」と強調されているのは、その企業との利害関係を持たない人物でなければならないからだという。だから、経営者の家族や子会社の役員は対象外。新しい社外取締役は、学者、弁護士、元官僚、他社の経営者が想定される。

また、これまで社外取締役を2人以上置いていた上場企業は全体の3割以下だったから、東証一部だけでもこれから2000人以上の社外取締役が必要になる。有名どころでは、富士通が日本初の女性宇宙飛行士の向井千秋氏を、東レがノーベル化学賞受賞者の野依良治氏(前理化学研究所理事長)を社外取締役として招くことが決まっている。繰り返しになるが、今回の社外取締役拡大の目的は、経営の透明度を上げて企業価値を高め、新たな投資を呼び込むことが狙いだ。尊敬するお2人ではあるが、これで会社の透明性が高まるとしたら、私の知らないところでお2人は企業統治の知見を得ていらっしゃっていたのだろうか。宇宙飛行士の経験を企業統治に生かすのは難しいかもしれないが、野依氏ならSTAP細胞騒動の渦中にあった理研の理事長であり、不祥事対策としての起用であるなら面白い。