2009年3月11日(水)

つまるところ、会社は誰のためにあるのですか

回答者ジャック&スージー・ウェルチ

PRESIDENT 2006年12月4日号

著者
ジャック・ウェルチ 

1935年、米国マサチューセッツ州生まれ。マサチューセッツ大学卒業後、イリノイ大学で博士号を取得、ゼネラル・エレクトリック社入社。副社長、上席副社長を経て、副会長に就任後、最年少の会長兼最高経営責任者となる。「フォーチュン」誌の「20世紀最高の経営者」に選ばれた。

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回答者ジャック&スージー・ウェルチ 翻訳=ディプロマット (c)2006. Jack and Suzy Welch. Distributed by New York Times Syndicate.

企業は誰のものなのでしょう。法律的に、ではなく、理念の上では、ということですが。株主のものだと言う人もいますし、従業員のものだと言う人もいます。また、顧客のために存在するものだと言う人もいます。ホリベ・トモヒロ(さいたま市、日本)


 

企業は株主のものです。株主が企業を所有し、支配するそれが現状であり、あるべき姿です。

身も蓋もない言い方をしましたが、誤解しないでください。あなたの質問は、けっして簡単な問いではありません。それどころか、企業の所有権、あるいはもっと一般的な表現にすると、企業への発言権(voice)にまつわる、往年の政策論争の根幹にあるものです。

たとえば労働組合のリーダーは、会社を支えている従業員は、もっと大きな分け前を得るべきだと主張します。

政治家は、交通量の増加、環境汚染など、企業が地元住民に与える損害について滔々と語り、コミュニティはその賠償を得るべきだと主張します。

また、社会活動家は、弱者を助ける強者の責任を声高に問います。

どれもが正論ですが、問題は、正論のなかに発言者それぞれの「隠れた目的」があり、その目的は、企業活動とほとんど関係がないことです。

組合のオルグ担当者は、組合員を増やし、財源を拡大するために、とにもかくにも会社を批判する。政治家にとっては、大きな敵を攻撃することは、有権者の支持を得るための手っ取り早い方法です。社会活動家は、最も安あがりな手段で自分たちの大義に関心を集め、その活動資金を募るために、えてして企業を標的にします。

企業がこれらの集団の主張に耳を傾けるべきではない、というつもりはありません。企業の将来は、意欲的な従業員と満足した顧客を生み出せるか否かにかかっています。企業はこの両者の声に耳を傾けなければならない。また、企業はコミュニティにおけるよき隣人として、社会の責任ある一員として、行動しなくてはなりません。

資本主義は、株主が「自分の会社の成功を望む」という原則に支えられています。株主は持続的な利益を望みます。持続的な利益は、満足した顧客、意欲的な従業員、繁栄するコミュニティ、健全な社会を生み出すのです。

資本主義を批判する人々の言い分もきいてみましょう。経営陣は目先の利益を最大化したいと考え、多額の利益を短期で稼ごうとして、従業員を酷使し、環境を破壊する。おまけに、役員に過大な報酬を払って、短期的な成果を追求させる。つまるところ、人間の強欲さが資本主義のきわめて大きな欠陥だこんな具合です。最近は、投資ファンドのように、株を買ってすぐに売り抜ける株主が増えていることも批判の対象になっています。

たしかに資本主義には欠陥がある。しかし、当の批判者たちが、自分たちの声を市場やメディアに反映させることができるという利点もあるのです。

ただ、発言権は「影響力」であって、所有権とは本来異なるものです。ですから最終的には、あなたの質問に対する法律上の答えと理念上の答えは、まったく同じになります。企業は、取締役を選ぶ株主のためにあります。その取締役会が経営者を選ぶのです。

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