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毎日コツコツ派の経営者の筆頭は、日本航空と京セラの名誉会長・稲盛和夫氏だろう。日航社内の壁のあちこちに、次の言葉が掲げられている。

「新しき計画の成就は、ただ不撓不屈の一心にあり。さらば、ひたむきに、ただ想え、気高く、強く、一筋に」

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短期集中派

2010年に、日航再建を託された稲盛氏はこの思想家・中村天風の言葉を社員に告げた。1秒の集積が1日、1週間、1カ月、1年、そして一生となる。人生は一瞬の積み重ねだ。大きな成果も偉業も、実は天才的な才能があるわけではない普通の人がコツコツと積み上げたもの――。そんな哲学を持つ稲盛氏は、自らもコツコツ精進してきた。たった社員8人で設立した京都セラミック(京セラの前身)を一流企業に成長させ、第二電電(現KDDI)も設立。日航の再建を軌道に乗せた。旧帝大系の大学出身者がずらりと並ぶ経営者のなかで、鹿児島大学工学部という地方大学出身の「非エリート」でありながら、組織のトップに上り詰めるとともに国内外に数多く支持者を持つことができたのは、やはり「毎日コツコツ」の賜物に違いない。御年82の現在も日々仕事に打ち込んでいる。

「ハングリーであれ、愚か者であれ(Stay hungry, Stay foolish)」という名言を残したアップル元CEOの故スティーブ・ジョブズ氏もどちらかといえばコツコツ派だ。

この言葉は曹洞宗の祖である禅師が説いた「愚の如く、魯の如し、只よく相続するを主中の主と名づく」の訳。

「よく相続するを……」はコツコツ1つのことを続ける人が最も強いという意味だ。形あるものは滅びる。だからこそ命ある間にたゆまず努力し、一瞬一瞬の生を最大限に発揮せよ、という教えをジョブズは信条とし、多くのイノベーションを起こしたわけだ。

財閥系企業を中心にこれまで120人の社長にインタビューしているジャーナリストの相沢光一氏はこう語る。

「不思議と大企業の社長の多くは『なぜ自分が社長になったかわからない』と言います。確かにグイグイ部下を引っ張るリーダー型は少数派で、地味な印象。派手な経歴や実績もあまりない。でも、話を聞いていると言葉の端々から、記憶力の良さや豊富な読書量に裏付けされた指揮官としての素養が備わっていることがわかるんです。人間的な厚みというか凄みのようなものを感じます。粘り強く、与えられた仕事を実直にコツコツやってきたから人望も厚く、結果的に出世の道を切り開くことができたのだと思います」

山を下(裾野)から築き、「視界」を別次元のものにしていったのだろう。

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