2015年4月7日(火)

なぜAmazonは売り上げの半分以上を“書店にない本”で稼ぐことができるのか

サイバーリテラシー・プリンシプル(21)ちりもつもれば山となる

PRESIDENT Online スペシャル

著者
矢野 直明 やの・なおあき
サイバーリテラシー研究所代表

朝日新聞社で1988年にパソコン使いこなしガイド誌『ASAHIパソコン』、95年にインターネット情報誌『DOORS』を創刊、初代編集長をつとめる。2002年にサイバーリテラシー研究所を開設し、「サイバーリテラシー」という考えのもとに、現代IT社会における人間の生き方を模索してきた。この間、慶応義塾大学、明治大学、情報セキュリティ大学院大学、サイバー大学などで教壇に立つ。主著:『マス・メディアの時代はどのように終わるか』(洋泉社)、『インターネット術語集』(岩波新書)、『インターネット術語集II』(同)、『サイバーリテラシー概論』(知泉書館)、『総メディア社会とジャーナリズム』(同、2009年度大川出版賞受賞)、『情報文化論ノート』(同)、『IT社会事件簿』(ディスカヴァー21)。

執筆記事一覧

サイバーリテラシー研究所(代表 矢野直明)=文
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パレートの法則とロングテール

インターネット普及前の商店のあり方を思い出してみよう。これは現在のふつうの商店にも当てはまるけれど、たとえば、書店でも衣料品店でも、店頭にはたいてい多くの人が気に入るような人気商品が並んでいる。その理由は、店のスペースには限りがあるということと、客はたいてい近くの住人だからである。地元商店街ならまさにその地域に住む人びとであり、都心の大型店でも、関東圏、関西圏など規模が広がるけれど、地理的制約が働いていることは同じである。

だからこそ店は限られた店のスペースに一般受けする商品を並べ、個性的な商品はあるとしても、店の隅に置かれることになる。もちろん特殊な商品をそろえた専門店もあるわけだが、それぞれの分野で人気の商品を並べるという基本構造は変わらない。

だから「その店の売れ筋商品の2割で売り上げ全体の8割を占める」といった「パレートの法則」が成立する。オンラインショッピング黎明期にワイアード編集長、クリス・アンダーソンが書いたことだが、アメリカにはインド人が推定で170万人住んでいる。インドの映画産業は毎年800点を超える長編映画を製作しているが、それらの映画はほとんどアメリカでは上映されない。なぜか。映画館の客は周辺住民だけであり、そこでヒットするためには、みんなに喜ばれるハリウッド大作である必要があったからである。「地理的にばらばらと分散した観客は、いないも同じになってしまう」。これがベストセラーを生み出す構造だった。

インターネットの普及でオンラインショッピングが活発になるにつれて、こういう商売の方式そのものががらりと変わった。アマゾンを考えればわかりやすいが、オンラインショッピングでは店のスペースを考える必要がないから、品ぞろえは豊富だし、顧客も地理的制約を離れてグローバルにやってくるから、売れ筋商品だけをそろえる必要がない。むしろあらゆる商品をそろえておけば、だれかしらがそれを買ってくれる。大事なのは配送システムになる。

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