近ごろ金融機関のポスターでNISA(ニーサ※)という文字を目にする機会が多くなりました。これは、投資家の裾野を広げることを目的に昨年スタートした「少額投資非課税制度」のことで、銀行や証券会社で専用の口座を開くと株や投資信託への投資で得られた利益が非課税になるというもの。投資枠の上限は年間100万円、最長5年間利用できるので、最大元本500万円までの資金運用が非課税でできる仕組みです。

通常の場合、株や投信などから得られた利益には20%の税金がかかるので、たとえば100万円の利益が出たら20万円の税金を払うことになります。しかし、NISAを使えば税金を支払う必要がありませんから、税金分の20万円が丸々得になるわけです。

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日本の家計金融資産1600兆円の年代別保有割合(出典:総務省「平成25年家計調査」)

この制度を使うなら、学資保険代わりに月々数万円ずつ積み立てて、その分を投資していく方法があります。もちろん、投資なので損をする可能性はあります。しかし、資産形成の基本は、さまざまな商品を組み合わせ、長期に投資することです。最近では月500円からできる積み立て投信もあるので、初心者が勉強のために始めるにはNISAはいいきっかけになります。

2015年度の税制改正で、16年より投資枠の上限が120万円まで拡大されることになります。これにより、キリ良く毎月10万円を積み立てられるようになるのですが、出費がかさむ子育て世代に、ここまでの額を投資に回す余裕はないでしょう。

今回の改正では、あわせて「ジュニアNISA」の創設も検討されています。私が注目したいのはむしろこちらのほうで、20歳未満の子供名義での投資が年間80万円、最長5年、最大元本400万円まで非課税となります。

ポイントとなるのは、これにより祖父母からの実質的な生前贈与を促す可能性があるということです。13年度の税制改正で相続税の基礎控除が4割カットされ、都心に不動産を持つ祖父母世代には相続の心配をする人が増えました。そうした人が毎年110万円の基礎控除の枠内で贈与し、そのお金をジュニアNISAを使い、非課税で運用するわけです。

祖父母世代は子供の間で相続争いが起こらないことを願うものの、自分から子供たちに相続の話はしにくいものです。一方の子供世代は、お金は欲しくても自分からは切り出しにくい。しかし、孫への贈与ならこうした問題は起きにくいのです。ジュニアNISAの創設は、贈与や相続というデリケートな話題を俎上(そじょう)に載せる、いいきっかけになると私は考えています。

※イギリスのISA(Individual SavingsAccount=個人貯蓄口座)をモデルにつくられた。その日本版ということで頭に「N」がついている。

(構成=山田清機)
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