“現地では当たり前の”情報を伝えてくれない

先日、日本の全国紙新聞に、大手の系列切りによって中小企業が苦境に陥っているという内容の特集記事が掲載されていた。こういうものばかり読まされていたら、誰だって日本の中小企業には未来がないという気になってしまうだろう。

もちろん、そういう目に遭っているところがあるのも知っている。しかし、それが日本の中小企業の現実なのかといえば、決してそんなことはない。むしろ、私のように現場を歩いてきた人間には、現在の日本の中小企業は経済のグローバル化によって、かつてない飛躍のチャンスに遭遇しているように思えるのだ。

日本企業にグローバル化の波が最初に訪れたのは1970年代から80年代初頭。このときは自動車や電機など大手製造業が、まずはアメリカに進出を開始し、10年ほど遅れて大手の2次、3次協力メーカーである中小企業がこれに続いた。

次の波が来たのは90年代初頭からだ。ようやく政治が安定してきたが、経済インフラの整備が十分でなく、海外からの直接投資を渇望するASEAN4(タイ、マレーシア、インドネシア、フィリピン)を中心とした東アジア諸国に、日本企業がこぞって向かっていった頃だ。ここでも先陣を切ったのは大手で、95年前後からは中小企業の動きも活発になっていった。

この時期に進出した企業の多くは、振り返ってみると立地条件のいい場所を自由に選ぶことができ、現地の優秀な人材を容易に採用できるなど、先行者としてかなりの恩恵を受けてきた。だが、この第2の波は、97年に起こった「アジア通貨危機」を機に一旦収束する。これ以降、日本の投資熱は冷え、現地から撤退を余儀なくされる企業も少なくなかった。

その後、2002年頃から第3のグローバル化の波がやってくる。舞台は引き続きASEAN4に代表される東アジア圏と、市場開放後急激に経済が発展し始めた中国。そして、これらの地で主役に躍り出たのが、長引く景気低迷で収縮する日本市場に業を煮やした中小企業だ。

この第3の波は、08年のリーマンショックで一時勢いを削がれたものの、11年に起こった東日本大震災以降は再び活況を呈し、現在まで続いている。