強さの源泉は、品質管理、開発力、設備設計力

中小企業の多くは、完成品をつくっているセットメーカーに部品や素材といった中間財を供給している。もちろん、グローバル化の中で厳しい競争にさらされている点は、中間財も完成品も変わらない。違うのは、日本の大手製造業が供給するエレクトロニクス系の完成品が、アップルやサムスンなどに後れをとっているのに対し、日本の中小企業が扱う中間財は、国際市場で素晴らしい競争力を持っているところだ。彼らの最大の強さの源泉は、品質管理はもとより開発力や設備設計力だといっていいだろう。

例えば、与えられた設計図どおりに部品を加工することであれば、ASEAN諸国や中国の中小企業にもできる。しかし、発注元の大手企業に「ここはこうしたらどうか」と逆に提案したり、自ら図面を描いて親会社に提出し、承認を得てから製作することが可能な中間財メーカーは、日本以外にはほとんどない。

なにしろ、日本の中小企業は国内の厳しい市場で、50年から60年にもわたって同業他社との間で、熾烈な競争を経験してきているのである。その間に技術力はもとより、取引先との信用の構築、地域社会への貢献などさまざまな面が鍛えに鍛え抜かれている。片やASEAN諸国には、まだ20年程度の歴史しかないのだから、その差を埋めるにはまだまだ時間がかかるというわけだ。そして、この事実は国外でもよく知られていることだ。それゆえ、どこの国でも日本の中間財メーカーというだけで、喜んで取引に応じてくれる企業は多いのである。