2015年3月18日(水)

春闘、中小は「賃上げほぼ0円」格差拡大

プレジデント・マネーNEWS【25】

PRESIDENT Online スペシャル

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今年のベア? 「広がるよ、でも……」

「今年のベアはどうなりますか?」

私は、賃金コンサルタントという職業柄、このような質問をよく受ける。これに対して、私は「ベアは広がる」と即答している。確かに、数日前、トヨタ自動車は賃上げ月額4000円、日産自動車も同5000円で春闘の労使交渉が事実上決着したとの報道もあった。

だが、私は「ベアは広がる」の後にこう付け加える。

「ただし、大手の間の話だ。中小企業では、業績に明暗があるので一概に言えないが、ベアの実施はほんの一部しかないだろう」

▼初任給の引き上げは顕著な動き

私が代表を務める北見式賃金研究所(名古屋市)は2015年2月、顧客を対象にして新卒初任給の調査を行った。愛知県下の中小企業104社が回答した。2015年4月入社の人の初任給を引き上げる会社は、18%にのぼった。さらに2016年の初任給に関しても早々に引き上げを決めた会社もある。

初任給を引き上げる理由は何か?

それはもちろん求人が目的である。アベノミクスが始まって以来、求人難の傾向が強まり、中小企業は応募者が集まらずに苦労しているところが少なくない。

初任給は、これまで多くの企業が据え置いてきた。リーマンショック以降、人減らしが進行する中で、初任給を引き上げた会社は希で、話題にすらならなかった。だが、アベノミクスで様相が一変した。

▼2014年にベアを実施した中小企業は6%のみ

北見式賃金研究所は昨年、2014年春に顧客の賃金明細を検証した。

顧客各社の給料の改定前と後の賃金を比較して、どのように上がったのか実態調査を行った。比較したのは基本給の増減である。94社から8600人の社員の賃金明細を入手できた。経理部経由の1円の間違いのない、正確無比なデータである。

ここで問題になったのは、ベアという言葉の定義だった。賃上げには、ベースアップと定期昇給という2種類がある。

ベースアップ、つまりベアとは「賃金を全員一律に底上げすること」である。

これに対して定期昇給、つまり定昇とは「1年間の勤続を評価して賃金を引き上げること」である。

だが、実際には中小企業ではベアと定昇が分かれていない場合が多い。そこで「初任給を引き上げ、かつ、初任給アップ額以上の賃上げをほぼ全員に行った」会社のことを、ベア実施とみなした。

▼若年層のみ恩恵 いい人材採用のため

この賃金明細の実態調査で、次のようなことがわかった。

ベア実施は会社単位で6%。定昇のみ実施は会社単位で82%。残りは賃上げナシ、もしくは減給だった。

ベアを実施したのは6%で6社だった。顧客企業だから、どんな会社なのかよく存じ上げている。6社のうち、4社は自動車関連で数億円単位の経常利益を出している優良企業だった。残り2社は、これも数億円の利益を出す企業だった。

冒頭で述べたように、今春、初任給を引き上げる予定の会社が18%なのに、昨春ベアを行ったのは6%しかなかった。このことから「差」の12%は、初任給がらみの若年層のみ引き上げた会社だったということになるだろう。言ってみれば、いい人材を採りたいがゆえの苦し紛れの初任給引き上げだったのだ。つまり、新人さん以外は、世間で叫ばれているほど、恩恵はなかったということだ。

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