朝の過ごし方は、仕事を引きずらないため、夜とは違って十人十色だ。今回、プレジデント編集部では各社エースの朝の過ごし方に密着取材。その多様さから、仕事に対する姿勢も見えてきた。

毎晩子どもと夕飯を食べる日々

「ふつうの人は、夜遅くまで残って仕事をするけれど、僕は朝早く来て仕事をする。違うのは“いつ戦うか”だけですよ」

こう言うのは日立製作所に勤める柴田英寿さん。もともとSEとして入社したが、現在は社内や会社同士の調整をする事業企画の仕事に携わっている。

柴田さんは毎朝5時半に起きて7時前には出社する生活を、入社以来20年以上続けている。家を早く出るコツは前の晩に持ち物や服を全部準備しておくこと。朦朧としていてもサッと出かけられる。早朝に出社することで得られるメリットは少なくない。まず、電車の座席を確保できる。10冊以上の著書を持つビジネス書作家でもある柴田さんにとって、車内は原稿を書くための書斎なのだ。

通勤時間も徹底的に効率化する。地下鉄のホームでパソコンを立ち上げ、途中で座れる電車に乗り換えて、自分の本の原稿を執筆する。

「座ることさえできれば、ノートパソコンを使って会社にいるのと同じように仕事ができる」と柴田さんは言う。最初は立ったままでもパソコンが使えるよう、首からヒモで板を吊り下げて机代わりにすることも考えたが、座席を確保するほうが簡単だと気づいて以来、始発駅まで戻ってでも必ず座るようにしている。

人一倍時間を有効に使うことを意識しているのはいうまでもない。

「電車の中で立ち上げるのではPCの起動時間がもったいない。電車が来る前に電源を入れておく」という柴田さん。「遅くまで残ることで存在をアピールするのはムダ。僕は定時に帰ることに執念を燃やしているので、お茶を飲んだりトイレに行ったりする時間もできるだけ節約する。何をするにも、“1秒でも短縮できないか”と考える。もう病気です(笑)」。

そんな柴田さんだが、家族と過ごす時間には効率を求めない。

「効率で見れば家族はムダばかり。誰も言うことを聞いてくれないし、話し合っても解決なんてしない。でも何のために生きているかといえば、一番は家族でしょ」

毎晩子どもと一緒に夕飯を食べるためにも残業しない働き方を選んだ。週末はほとんど家族と過ごす。それでも行きたい飲み会は断らないし(ただし1時間ほどで退席)、週1回は大学院生にアントレプレナーシップ論を教え、ボランティアにも力を注ぐなど、会社以外の時間も存分に活用している。