2015年2月2日(月)

トヨタvsグーグル! 人事トップに質問「なぜ社員がやる気に燃えるか?」

PRESIDENT 2013年9月16日号

著者
溝上 憲文 みぞうえ・のりふみ
ジャーナリスト

溝上 憲文1958年鹿児島県生まれ。ジャーナリスト。明治大学政治経済学部政治学科卒。月刊誌、週刊誌記者などを経て、独立。新聞、雑誌などで経営、人事、雇用、賃金、年金問題を中心テーマとして活躍。『非情の常時リストラ』(文春新書)で2013年度日本労働ペンクラブ賞受賞。主な著書に『隣りの成果主義』『超・学歴社会』『「いらない社員」はこう決まる』『「日本一の村」を超優良会社に変えた男』『マタニティハラスメント』『辞めたくても、辞められない!』『2016年 残業代がゼロになる』など。近著に『人事部はここを見ている!』(プレジデント社刊)がある。

執筆記事一覧

ジャーナリスト 溝上憲文=文 ライヴ・アート=図版作成
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日本とアメリカを代表するエクセレントカンパニーのトヨタ自動車とグーグル。業態が違うとはいえ、これほどまでに“働き方の文化”が異なる企業も珍しい。

第1は働く組織の違いだ。トヨタは迅速な意思決定や専門性の強化を目的にいったん組織のフラット化を目指したが、上司と部下の教え、教えられる濃密な結びつきが寸断。係長職(チームリーダー)を復活させるなど育成主体の組織に再構築した。一方、イノベーションと変革を起こし続けることを目指すグーグルは、個人の創造性を最大限に引き出すための基盤としてフラットな組織運営に徹底してこだわる。

第2の違いは育成方針だ。グーグルはあくまでも個人の主体的な意思を尊重し、自分のキャリアを自ら切り開くために、教えて育てるのではなく、仕事を通じて学び取ることに主眼を置く。トヨタは1人の落ちこぼれも生まない社員全員の底上げを目的に、全社教育と部門別教育を柱に入社後から徹底的に鍛え上げる育成システムを完備する。

第3の違いは人を評価する仕組みだ。トヨタは人の能力に着目し、専門スキルや組織の指導力などの伸長度合いを念入りにチェックする育成型の人事評価制度だ。評価基準も「人望」に象徴される定性的評価を重視し、能力に応じた異動・昇進・配置による適材適所の人事を通じて幹部社員に育て上げる。したがって育成主体の若年層から中堅層までは安定した給与が保証される。

これに対してグーグルの評価基準は、人の能力より、与えられた「職務」の成果に重点を置き、異動・昇進も“適所人材”主義をとる。仕事の進捗状況や製品開発などの実績について四半期ごとにチェック。人事部門の3分の1は数学・統計学の専門家で占められ、評価の公平性、納得性を高めるために、あらゆる角度から情報を収集し、定量的に分析する独自の手法を開発している。

第4の違いは雇用に対する考え方だ。創造的な製品やサービスを生み出すには常に最適な人材で組織を構成する必要がある。時にはバッドパフォーマーの退場を促し、優秀な人材と入れ替える新陳代謝を通じて組織活力を維持するやり方は米シリコンバレー企業の典型だ。もちろんグーグルも例外ではない。それに対して社員との信頼の絆を重視し、長期熟成型の人材活用による企業の成長を追求するトヨタは終身雇用を愚直に貫く。

働き方に王道はない。トヨタ、グーグルの異色の働き方から高成長を維持する秘密の一端が見えてくる。次回から採用、組織、人材育成など、5つの項目を比較し、探っていく。

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