記憶力がいい人は、想像力に乏しい!?

【岩波】多くの方が、記憶することが苦手だと悩んでいらっしゃると思いますが、そうした方々に先生から最後にアドバイスをお願いします。

【池谷】アドバイスというわけではありませんが、1つだけ。記憶力がよくなりたいという人は多いですが、丸暗記の得意な人って、一般的に想像力がないといわれているのをご存じですか? 物事をそのまま覚えることができる人って、全然発想力がないのです。 イマジネーション(想像力)とクリエーション(創造力)、この2つと記憶力はほぼ反比例します。なぜかというと、記憶力がいい人は詳細まで思い出せて、想像で埋める必要がないから。

でも、記憶力が悪い人はなかなか細部が思い出せないから、ああだったかな、こうだったかなと、イマジネーションを働かせて埋め込まなければならない。それは想像力の訓練をしているのと同じ。たとえ本人が「訓練だ」と思っていなくても、です。これを10年、20年、30年と続けていればどうでしょう。記憶力が悪い人は、自然と想像力や発想力が豊かになるのですね。

なんでこんな話をするかというと、最初に岩波さん、「僕は記憶力があまりよくないから、チェインでつなげる方法を思いついた」と言っていたでしょう? これはまさに、記憶をイマジネーションで補ったということ。つまり、チェイン記憶術は、記憶力そのものより、イマジネーションに特化するタイプの記憶法だと感じたからです。

【岩波】なるほど。ちなみに池谷先生は記憶力はいいほうですか?

【池谷】よくないですね。だってもし記憶力がよかったら、さっきの問題(http://president.jp/articles/-/14253?page=4)にしても、パソコンのファイルを時間をかけてあさることなく、もっとすんなり出せたはずでしょう?

【岩波】では、もっと記憶力を高めたいと思われますか?

【池谷】うーん、それは言い換えると、鳥になりたいかってことですよね。「せっかくここまで進化してきたのだから、逆戻りなんて嫌です!」って言おうと思ったけれど、よく考えたら、それも悪くないかもしれませんね(笑)。

池谷裕二(いけがや・ゆうじ)
東京大学薬学部教授
1970年生まれ。専門は大脳生理学。とくに海馬の研究を通じて、脳の健康や老化について探究している。最先端の知見をわかりやすく解説する脳のスペシャリスト。文部科学大臣表彰若手科学者賞、日本学術振興会賞、日本学士院学術奨励賞などを受賞。『海馬』(共著、新潮文庫)『記憶を強くする』『進化しすぎた脳』(共に講談社)『脳には妙なクセがある』など著書多数。

岩波邦明(いわなみ・くにあき)
教育家/ルイ・イーグル代表
1987年生まれ。東京大学医学部卒業。中高校時代に「数学オリンピック」の決勝に二度出場。大学在学中に教育コンテンツ開発会社「ルイ・イーグル株式会社」を設立し、新しい教育法を開発。小学生向けの新しい暗算法を紹介した『岩波メソッド ゴースト暗算 6時間でできる! 2ケタ×2ケタの暗算』(小学館)は、学習参考書としては異例の大ヒットを記録し、シリーズ累計65万部を突破。最新刊は『人生が豊かになる〈岩波メソッド〉チェイン記憶術』(プレジデント社)。