朝の来ない夜はないと言い聞かせた日々

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株価は5月後半以降、2000円台に
──株価は初値の1600円から2000円の大台を超え好調に推移しているのは、これまでの努力を市場から評価されたということだと思う。率直な心境は。

【後藤】2004年12月17日に西武鉄道が上場廃止になり、翌年の05年の2月1日に、私は西武グループに来ました。以来、約9年半、やはり最大の経営課題の一つが西武ホールディングスの上場でした。

この間、リーマン・ショックや東日本大震災、サーベラスとの件など紆余曲折いろいろありましたが、本年4月23日、上場を果たすことができ、うれしく思っております。

西武ホールディングス社長 後藤高志氏
──9年半の間、どんな思いで再建を進めてきたのか。

【後藤】西武鉄道は04年、有価証券報告書虚偽記載により上場廃止となり、信用不安に陥っていた。銀行も不良債権から立ち直れず、特に中下位の銀行では貸し渋りや貸しはがしが起こっていたことも事実です。そういう状況から早く脱却しなければならなかった。周囲からは「“火中の栗を拾う”ようなことをなぜするのか」といわれたこともありましたが、「侠気を出してやっていこう」と腹を決めました。

05年2月1日の記者会見のときに、座右の銘はと聞かれて、「朝の来ない夜はない」と申し上げましたが、これは外に対してだけでなく、自分自身にも言い聞かせてやってきたのです。

──この10年の間、様々な困難が立ちはだかってきたわけだが、その中で一番つらかったことは。

【後藤】一番つらかったのは、11年3月11日の東日本大震災以降のことですね。あれだけの大震災を目の当たりにして、「これからの日本はどうなるんだろう」「西武グループは」「自分自身は」、と非常に悩みましたし、暗澹たる気持ちになりました。

4月に入ると西武鉄道は計画停電で、1カ月ぐらい満足に運行できなかった。プリンスホテルも国内外のお客様からキャンセルが相次ぎ、稼働率が大幅に落ちてしまいました。あれが一番厳しかった。