世界のソニーに返り咲けるのか?

「ソニーは電子には滅法強いが、ウチ以上に機械に弱い。機電一体(メカトロニクス)が苦手というのでは、いくら技術力があっても単なる部品メーカーとして、アセンブリーメーカーに組み敷かれてしまう。結局は電子やハイテク分野で自前の製品を作り、そこにユーザーから高い付加価値があると評価してもらうしかないだろう」

長年ソニーとライバル関係にあった家電メーカー最大手、パナソニックの技術系幹部はこう語る。パナソニックは最近、家電業界では構造改革がうまくいき、業績を回復させたモデルケースとして取り上げられることが多いが、事業の大黒柱に育てようとしている自動車向け部品が厳しいコスト要求もあって利益がごく低いレベルにとどまるなど、決して楽な戦いはできていない。そのパナソニックから見ても、ソニーの手詰まり感は相当なものだという。

では、ソニーはどう復活の道を見いだすべきなのか。ソニーがまだ致命的な状態とまでは言えないのは、素晴らしい製品を生み出すベースとなる技術力はまだ世界第一級のレベルを維持しているからだ。

「ソニーは苦しい中で毎年、自動車メーカーなどと並んで巨額の研究開発費を投入し続けており、技術ファームとしては世界有数。また、そこから生み出される製品も、いろいろ揶揄されることも多いが、素晴らしいものが多い」(前出のパナソニック幹部)

問題は、その素晴らしい技術を、他社の後追いのような製品を作ることにしか生かせていないことだろう。今回問題になったモバイル分野にしても、アップルのiPhoneやサムスンのアンドロイドスマホに対抗することしか眼中になく、似たような商品を出すことしかできなかったのが失敗の原因だ。ソニーがいくら新機能や独自性を誇ったところで、ユーザーから些細な機能で差別化を図っているだけと思われる程度のものでしかなかったことは、販売スコアを見れば明らかだ。

ソニーに今求められているのは、人々のライフスタイルに影響を与えるようなコンセプチュアルな製品を生み出すことだ。社員が昔とすっかり入れ替わり、企業風土も変わってしまった今、それを成し遂げるのはきわめて難しいことだが、それをやらなければSONYのブランドは輝きを取り戻せない。単に不採算部門を切り捨て、有能な人材も一緒にリストラするだけでは、高い付加価値が求められる今どきの先進国の経営者としては仕事をしたことにならない。余った人材を活用して、収益性の高い新しいビジネスを創出することができて、初めて高額の報酬を受け取るCEOたる資格が出てくるというものだろう。

ソニーが栄光に包まれていた時代は、SONYのバッジがついているだけでユーザーが余計にお金を払うという風潮があり、そのブーストが経営成績を押し上げていたという側面があった。ユーザーのほうも世代交代が進み、SONYのバッジに価値を見いだす層がどんどん減っている今は、その輝きを取り戻すラストチャンス。そこで今一度、世界のソニーに返り咲くか、優秀な技術を安値で切り売りする下請けメーカーに成り下がるか。まさに正念場である。

(時事通信フォト=写真)
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