日本経済は消費税増税の逆風を乗り切り、株価は再び上昇局面に入ったようだ。2020年の東京オリンピックを控え、各社、攻めの経営が目立つ。少子高齢社会のなかで、企業はどこへ向かうのか。新たに経営トップの座についた人物を解剖し、未来への展望を開く。

世界最高性能の「秘蔵のカード」を切る

1990年代には日本勢が圧倒的な強さを誇った半導体露光装置。ニコンはシェア約50%と市場に君臨したが、今はオランダのASMLに80%を握られ、15%に甘んじる。これを再逆転させる使命を担うのが牛田一雄社長だ。そのため、開発目標を最先端分野から変える決断もした。その勝算はいかに。

ニコン代表取締役社長 牛田一雄氏
――ニコンはなぜ、シェアを奪われ、いかに奪回するのか。

【牛田】2000年代に入り、ICチップを切り出すウエハーの口径が200ミリから300ミリに移行し、半導体メーカーは生産効率を飛躍的に向上させようとした。この転換期を逃さず、顧客ニーズに応えて勝ち抜く戦略に徹したのが専業メーカーのASMLだった。2枚のウエハーを同時加工する画期的な装置を投入。われわれは「1枚でも大変なのに、できるわけがない」と高をくくっていた。

日本勢は圧倒的シェアを持つなかで、エボリューション(順次発展)をすればいいと思っていた。一方、ASMLは技術でレボリューション(革命)を起こし、オセロゲームのようにシェアを奪った。ニコンがこの差を埋め、追い抜く世界最高性能を持った製品を送り出すことができたのは、今年4月。14年の歳月を要した。

この間、精機カンパニープレジデントとしてトップセールスを行ったが相手にされない。悔しさをバネに、技術者たちとともに製品の実力を高めた今、悲願のシェア奪回を期すのは、近々予想されるウエハー口径の300ミリから450ミリへの転換期だ。ASMLはすでに「ツインステージ」というカードを切ってしまったが、ニコンにはまだ切っていない「秘蔵のカード」がある。3年後にシェア30%、さらに50%を目指す。