日本経済は消費税増税の逆風を乗り切り、株価は再び上昇局面に入ったようだ。2020年の東京オリンピックを控え、各社、攻めの経営が目立つ。少子高齢社会のなかで、企業はどこへ向かうのか。新たに経営トップの座についた人物を解剖し、未来への展望を開く。

再建に奔走15年、逆風を乗り切る力

長谷工が再建から攻勢に転ずる。営業畑から満を持しての登場だ。大栗育夫前社長(現会長)とはともに再建に取り組み、営業は辻、技術は大栗と役割分担してきた。「どちらが社長になっても長谷工再生のために2人で力を合わせて頑張ろう」と語り合った仲。会社の方針も基本的に2人で話をしてきた歴史がある。社長になった今も変更はない。

――足元の受注が好調だ。
長谷工コーポレーション代表取締役社長 辻 範明氏

【辻】入社以来40年間で、過去最高の受注環境だ。手間のかかるマンション事業からゼネコンが少しずつ撤退しているからだ。デベロッパーが発注できる業者が少なくなっている。コスト、工期などに鑑み、マンション専業の当社に発注が集中する状態だ。今職人が足りないと言われるが、もともと当社には、年間1万戸強を竣工できる実力を持つ協力業者が東西で揃っている。当社の協力業者はマンションしかやっていない。マンション建築の匠が集まっているのが強みだ。

――バブル崩壊後の99年、46歳のときに取締役に就任し、立て直しに奔走してきた。

【辻】銀行の支援を受けて本格的な再生をスタートさせた。営業担当だったが、仕事を取らないと会社は潰れてしまう状態だった。当社はデベロッパーと競争し、押さえた土地でマンション事業のプランを練り、デベロッパーに土地を買ってもらい、工事を受注する。まずは潰れないために土地を押さえることに全精力を費やしてきた。その間、社員たちも一致団結してほとんど辞めなかった。たび重なるリストラ、給与カットに昇給ストップ。それでもよく頑張った。ある社員が「道路の端っこを上を向いて堂々と歩こうぜ」と言ったことがある。修羅場、土壇場、正念場を経験した。