2014年8月29日(金)

なぜスタジオジブリは映画から撤退するのか

PRESIDENT 2014年9月15日号

著者
境 真良 さかい・まさよし
国際大学GLOCOM客員研究員

境 真良1968年、東京都生まれ。93年東京大学卒業、旧通商産業省(現経済産業省)入省。同省メディアコンテンツ課立ち上げに参画し、東京国際映画祭事務局長等を経て国際大学グローバル・コミュニケーション・センター客員研究員を兼務。

答える人=国際大学GLOCOM客員研究員 境 真良
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スタジオジブリは「宮崎駿」に支えられてきた

そこで、宮崎監督が(少なくとも長編アニメ制作からは)引退するとなると、スタジオジブリは収益源と、その理念的基軸とを同時に失うことになります。決算公告などを見ても、現時点でジブリの経営が悪化しているわけではありませんが、鈴木プロデューサーは、むしろ長期的にアニメ制作を続けていきたいからこそ、社員雇用体制を廃止することを前提に、これまでのジブリの制作事業のやり方を見直そうと発言したのだと思われます。世間はそれを拡大解釈してジブリが制作事業を全てやめてしまうと心配したのでしょう。

報道に拠れば、鈴木プロデューサーは「長編アニメーションの制作を小休止する」と語り、現在公開中の『思い出のマーニー』以後の新作映画には、当面着手しないという考えを示すに留まったそうです。ジブリとしては、合理的な選択でしょう。

ただ、この決定は、「あのスタジオジブリでも社員雇用体制の維持はできなかったか」という一つの感慨でもあります。ジブリの制作体制の変更は、むしろアニメ業界がいいアニメーターをどう育成し、維持していくのかという課題を浮き彫りにしたといえるでしょう。

※1:会社に所属していても、様々なプロジェクトに都度参加するという、いわば派遣の変種とも言えるような実質フリーのスタッフもいます。
※2:実際には社員アニメーターだけで作品制作を賄いきることはできず、作品制作時には下請けや社外アニメーターの動員も行っている。

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