絵画販売商法は巧みなフレームワーク思考

モノを売る仕事でもっとも緊張する場面は、商品の値段を提示し、契約をさせる最終段階である。それまで商品やサービスの説明を好意的に聞いていた消費者も、いざお金を出すとなると、本当に必要な商品か真剣に考え出すからだ。

なかには、散々考えたあげく「やっぱりいりません」と断る人も出てくるだろう。この最終段階をいかに乗り越えて、契約を勝ち取るかが、悪質商法のみならず、通常のビジネスにおいても、実績をあげるか否かの分け目になってくる。

消費者がこの最終局面で書面にサインをするのを拒んで来たら、どうするのか。

悪質商法では様々なテクニックを弄するが、そのひとつに「視点を変えて、説得する」という手がある。

おそらく40・50代の方であれば、街頭で絵の販売会場に連れ込むキャッチセールスに声をかけられた経験があるのではないだろうか。

私もキレイな女性から声をかけられ、見るだけのつもりで、絵の展示会場に入ったことがある。画廊をその女性と一緒に見回ると、「どの絵が気に入りましたか?」と尋ねてくる。あるリトグラフを指差すと、女性はその絵の前に椅子が2つ置き、いきなり商談態勢に入った。女性はこう購入を迫ってきた。

「この絵を選ぶなんて、お目が高い。買ってみませんか?」

私がなかなか契約に同意しないためか、次にベテラン女性が彼女登場して、言った。

「この絵の値段が、150万円とは高いですよね。でも、もし、この値段が3~5万位だったらほしいですか?」

それに対して、私が「その位の手頃の値段だったらね」と頷くと、女性は目を輝かせて「クレジットなら月々その位の値段で買えますよ!」と、ローン会社のクレジット表をめくりだす。

月払いの金額を提示して、手頃な値段で絵が手に入ると錯覚させてきたのだ。しかし、子供でもあるまいし、そんな目くらましに乗るはずもない。すると、女性は次のように、「視点を変えて」きた。

「絵との出会いは運命です。一度しかない出会いを大切にすべきです。もう二度と会うことないかも知れませんよ」

人生に一度しか出会えない運命の絵。一期一会だと強調してきたのだ。より「高い視点」に私を立たせ、現在という時は一度しかないと思わせて、「買うのは今」とばかりに契約を迫ってきたのだ。

女性は畳み掛けるように「絵は買いたいと思った時に買わないと。絶対に後悔する」などと購入契約を迫ってきた。正直、私はこれらのトークにグラリときたが、何とか断って画廊を後にした。