2014年5月27日(火)

なぜオレオレ詐欺犯は「聞く7:話す3」なのか

ワルの経済教室【2】

PRESIDENT Online スペシャル

著者
多田 文明 ただ・ふみあき
ルポライター

キャッチセールスや悪質商法の実態に詳しいルポライター。『キャッチセールスルポ―ついていったらこうなった(文庫本)』(彩図社)『クリックしたら、こうなった』(メディアファクトリー)など、騙され体験の実況中継記事に定評がある。最新著に『あなたはこうしてだまされる 詐欺・悪徳商法100の手口』(産経新聞出版)。

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ルポライター 多田文明=文
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ワルは、「ビジネス会話」のセオリーを守っている

昨年度の振り込め詐欺を含む特殊詐欺の被害総額は、486億9000万円を超えて過去最悪の被害額になった。そのなかで、オレオレ詐欺の被害もかなり高い数字になっている。警察による必死の注意喚起が実らないのには、理由があった。実は、犯人の手口はますます巧妙化するが、彼らは一貫してある「会話のセオリー」を守っていたのだった。

典型的な詐欺のパターンを見ながら、そのセオリーを見つけ出してほしい。

「オレだけど」

ある日、男から高齢女性のもとに電話がかかってくる。息子だと思い込んだ女性は答えた。

「○○かい。なんだい」。息子の名を呼んで尋ねると、相手は次のように言って、電話を切った。

「実は電車に小切手と携帯電話の入った鞄を置き忘れてしまった。今、会社の人の携帯を借りて、電話からかけているんだ。もしも駅の落し者係から電話がきたら、話を聞いておいてね」

ほどなくして、再び、息子から深刻な声で電話がかかってくる。

「小切手をなくしたことで、会社でトラブルになっていて……、ちょっと上司に変わるよ」

すると、息子の上司を名乗る人物が出て丁寧な口調で言った。

「実は、息子さんがなくした小切手は、今日中に取引先へ渡さなければならないものです。小切手は紛失とともに凍結したのですが、その分の代金を今日中に工面しなければならなりません……そのお金の一部を、お母さまに立て替えていただけないでしょうか」

そこで現金を今すぐ、どのくらい用意できるかを尋ねて、もし手元に現金がないようであれば、母親を銀行に行かせて、おろすように仕向けてくる。

しかし今は、銀行も詐欺に対する警戒は厳しいので上司は、「会社にばれると、息子さんは会社をクビになる可能性がありますので、公にしないでほしい」と口止めをしたうえで、もし銀行からどんな用途でお金を使うのかを尋ねられたら、「お葬式代かリフォーム代と答えてください」と指示する。

母親がお金を銀行でおろして自宅に戻ると、息子や上司から何度も電話があり、お金の受け渡しの指示がある。今は、ATMでの警戒が厳しくなっているので、お金は会社の同僚などを名乗る男が直接、取りに来ることが多い。

今年に入っても、こうした何人もの人物を登場させて電話をかける手口で、70代女性が自宅にあった1200万円以上を騙し取られており、被害は多発している。

息子や孫になりすました人物が、金を騙し取るオレオレ詐欺は昔からある手口で、警察などが散々注意喚起しているにも関わらず被害は起こり続けている。

なぜなくならないのか?

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