2014年3月2日(日)

「復習4回」で脳をダマすことができる

プレジデントFamily 2014年4月号

著者
池谷 裕二 いけがや・ゆうじ
東京大学薬学部教授

池谷 裕二1970年生まれ。専門は大脳生理学。とくに海馬の研究を通じて、脳の健康や老化について探究している。最先端の知見をわかりやすく解説する脳のスペシャリスト。文部科学大臣表彰若手科学者賞、日本学術振興会賞、日本学士院学術奨励賞などを受賞。『海馬』(共著、新潮文庫)『記憶を強くする』『進化しすぎた脳』(共に講談社)『脳には妙なクセがある』など著書多数。

池谷裕二(東京大学大学院薬学系研究科准教授)=教える人 小川 剛=構成
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理想の復習スケジュールは

ヒトの記憶には「短期記憶」と「長期記憶」があります。短期記憶というのは、長期記憶に情報を保存したり、逆に長期記憶から情報を引き出したりするための一時的な保管場所のようなものです。

短期記憶は時間の経過や新たな情報が入ってくることですぐに忘れられてしまいます。対して、脳が本格的に情報を記憶するときに使うのが長期記憶です。いわば脳のハードディスクです。

長期記憶の容量も限られていますから、脳は仕分けを行い、「必要」と判断された情報だけが、大脳皮質に送られて長期保管されるのです。

この仕分け作業をつかさどっているのが脳の「海馬」という場所です。

海馬はどのような基準で、情報を選別するのでしょうか。それは「生命の存続に役立つかどうか」です。海馬は「生きていくために不可欠」と判断した情報だけを取捨選択して、長期記憶に送り込みます。

では学校の勉強で学ぶことは「生きていくために不可欠な情報」でしょうか。いずれ将来的には生きることに役立つかもしれませんが、当面生きるうえでは「不可欠」とはいえません。つまり、脳科学的に見れば、「いくら勉強してもなかなか身に付かない」「覚えられない」というのは、きわめて自然なことなのです。

ではどうすれば海馬に「必要な情報」と判断させられるのか。方法はただ1つ、海馬をダマすことです。

とくに手に書いたり、声に出したりしながら何度も復習することが効果的です。

せっかく覚えた漢字や英単語を忘れてしまったとしても、その単語が脳から完全に消えてしまうわけではありません。思い出せなくなっているだけで、実は無意識の世界には保存されています。

こんな実験があります。まったく意味のない単語を10個覚えてもらい経過をテストします。すると、4時間後には平均で5個しか覚えていません。ところが一度すべて忘れてしまった後、同じ10個を覚えると4時間後にも平均7個ほど覚えているのです。

学習を繰り返すことで、無意識の記憶が暗記を助けて、以前よりしっかりと覚えられるようになる。それが勉強における「復習」の効果です。

では、どのようなタイミングで何度、復習するのが効果的なのでしょうか。

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