徹底した議論からイノベーションは生まれる

P&Gシニアエグゼクティブオフィサー兼プレジデント-アジア 
桐山一憲氏

P&Gアジアの売上高は約1兆5000億円。2025年に5兆円を目指しています。その達成にはダイバーシティ(多様性)が不可欠だと考えています。日本をはじめインドや東南アジア、中国、韓国、オセアニアのほぼ全域をカバーしていますが、宗教も違えば食文化も違う。インドのように日用品購入の意思決定権を夫やその母が握る地域もあれば、家事に費やす金額も国によって違います。

国・地域ごとに異なる多様な消費者のニーズに対応していくには、多様性のある組織が必要で、それをしっかり束ねるのがリーダーの役割です。アジア全体で67カ国、日本にも20カ国の社員が在籍しています。しかもアジアの女性社員比率は50%、部長級以上では34%を占めています。アジア地域の幹部が集まる会議のメンバーは約20人。日本人は私を含めて3人。インド、インドネシア、シンガポール、アメリカ、フランスの人もいるマルチナショナルな会議です。

会議に限らず職場では、さまざまな意見が飛び交いますが、意見が出るのはよいことで、ディベートをたくさんしようと言っている。反対、賛成の意見を戦わせるコンフリクトからイノベーションは生まれます。同じ国や環境で育った人との議論から生まれるイノベーションとでは、内容や質も大きく違います。そのためにも意見を言い合える雰囲気をつくり出すのもリーダーの大切な役割です。

私自身、マネジメントという立場ゆえに、周囲が萎縮し、私の意見がそのまま通ってしまい、結果的に失敗するという苦い経験を味わったことが過去にあります。そうした失敗を繰り返さないため、自分の足で歩いて現地の消費者の声を聞いたり、会議でも「意見を言ってみてよ」と一声かけることを心がけています。

いろんな意見の中から事業戦略を最終的に決定するのは私の役割です。いったん決定したらそれに向かって全員が集中する。選択と集中が重要です。戦略が明確になれば、それに基づいた国別、カテゴリー別のアクションプランを作ります。もちろん意見が2つに割れることもあります。自分の意見が常に通るとは限りません。それでも最終決定が下った以上、全員が一つの方向に向かって、ワークさせるのが私のミッションとなります。全員を納得させるのは難しいのですが、自ら率先して行動で示すことが大事だと考えています。